「これでいいのだ」。天才バカボンのパパならそう言ったかもしれない。正直、とてもいいゲーム内容とは思えなかった。それでも「勝てばいいのだ」。そう思いたい。
「結果オーライはあかんぞ。あかんけどな、エエときもある。そういう時期があるんや」。闘将・星野仙一の言葉だ。凡ミスが出たり、狙った攻撃ができなかったり。結果的に勝てても春先なら「しっかりせんか!」と怒鳴る闘将だがシーズンの押し迫った秋には口にしなかった。
重苦しい試合だ。大山悠輔を外し、4番から並べた助っ人3人衆が湿った。9回こそサンズが進塁打を転がし、勝利に貢献した。メジャーでも重要とされる仕事だが、本来はそういう役割を求めているわけではないだろう。
そしてチーム最大の課題、守備だ。9回に犠飛を放ち、ヒーローになった木浪聖也だが守備ではいろいろやってしまった。まずは3回1死一塁、三ゴロ併殺かという場面。いわゆる“ピボットプレー”の際に球を握り損ねてしまう。失策にはならなかったがこれは明らかなミスだ。
2点リードの6回1死一、二塁では代打・福留孝介の二ゴロをさばくが二塁封殺を選ばず、一塁へ送球。走者を先に進めてしまい、結果的に同点となる状況をつくってしまった。5回にも少し似た微妙なプレーがあった。真面目で人として気持ちのいい木浪、久々のスタメンで緊張したのか。最後の犠飛で救われていれば幸いだが、そこはやっぱりしっかりしてほしい。
いずれにせよ苦しむ指揮官・矢野燿大にすれば「救世主」が欲しい状況だろう。だからこそ木浪の起用だったかもしれない。それが殊勲者になったから、まずはよかったはず。しかしドラマではないのだから、そんな存在がポーンと出現するものではない。
そこで例えば梅野隆太郎だ。5回、ピックオフプレーで一塁走者を刺したのは秋山拓巳ともどもバッテリーのいい仕事だった。やるべきプレーをしっかりとやること。それを抜きにムードが上昇していくことはないと思う。
「我慢の中で拾えた」。安打数で負けた試合で勝った矢野の言葉は本音だろう。優勝経験のない選手ばかり。耐えるしかない。苦しい状況の中、踏みとどまることは悲願の16年ぶりVだけでなく、必ずチームの大きな糧になるはずだ。(敬称略)(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)