こういう試合ができれば優勝も夢ではない。そんな気がした。試合、勝負事には必ず「流れ」がある。本当に不思議なぐらい、それはあるのだ。この試合、勝敗を左右する流れを感じた局面は2つあった。

オリックス対阪神 5回裏オリックス2死三塁、大里のハーフスイングをアピールする阪神藤浪(撮影・前岡正明)
オリックス対阪神 5回裏オリックス2死三塁、大里のハーフスイングをアピールする阪神藤浪(撮影・前岡正明)

最大のそれは5回、藤浪晋太郎だ。同点で迎えたこの回、藤浪は先頭・渡部遼人をゴロに打ち取ったものの糸原健斗が失策。福田周平にも二塁内野安打を打たれた。さらに2つの盗塁を許したこともあり、失策をきっかけに無死二、三塁のピンチを迎えたのだ。

そして後藤駿太に犠飛を打ち上げられ、勝ち越しを許す。さらに3番・吉田正尚の当たりは藤浪の右足を直撃。だが藤浪は落ち着いてこれを処理、一塁で刺した。局面が2死三塁になって大里昂生へのカウントは3-0。また四球でズルズルいくかとも思ったがここから空振り三振に切り、1失点でしのいだのだ。

評価したいのは藤浪の落ち着きぶりである。「今年は違う感じがするんです」。2月のキャンプでキッパリとそう言っていたが確かに顔つきが違う気もする。あの場面、失策から大量失点…となっていれば糸原にとってもチームにとっても厳しかったが藤浪の落ち着きがそれを防いだ。

もう1つのポイントはその場面の少し前、1点を追っていた4回の攻撃だ。先頭・近本光司がオリックス山本由伸から中前打。島田海吏がバントで送れず1死一塁に。ここで打者マルテが空振り三振した際に近本が盗塁。さらに捕手-遊撃への送球の乱れで三塁へ走った。2死三塁だ…と思った瞬間、プレーが止まる。

オリックス対阪神 4回表阪神2死一塁、佐藤輝は中越え適時三塁打を放つ(撮影・前岡正明)
オリックス対阪神 4回表阪神2死一塁、佐藤輝は中越え適時三塁打を放つ(撮影・前岡正明)

空振りしたマルテのバットが捕手の若月健矢に触れており、守備妨害で近本が一塁へ戻されたのだ。得点機だったのに2死一塁か…とガックリした直後、佐藤輝明が適時三塁打を放った。これもマルテの“ミス”を佐藤輝が救った形だ。

反対に阪神が逆転した7回は1死一塁からボークをおかし、危機を広げたオリックス3番手・比嘉幹貴に梅野隆太郎、中野拓夢が一気に襲いかかった結果である。オープン戦だが、この日の「流れ」は間違いなく阪神にあった。

どうやったら「流れ」を自軍に呼び込めるのか。正解はないが「集中力」と「全力プレー」はその最低の要素だろう。その意味で藤浪と佐藤輝という看板選手がチームをピリッとさせたことはとても大きかったと思う。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)