満員の甲子園に流れる「六甲おろし」である。長年の習性で、一瞬、「負けたのになんで?」と思ったが、この日だけは特別だ。今季主催公式戦のラスト。この日も4万2620人を飲み込み、通算300万人を突破した甲子園はとりあえず、ひと区切りというムードだろうか。

その区切りの試合で不名誉な記録をつくってしまうところだった。DeNA先発・吉野光樹に6回を無安打に抑えられると7、8回もヒットが出ない。「ノーノー」なら今季は5月24日にこの甲子園で巨人戸郷翔征に食らっており今季2度目になってしまう。さらに継投による無安打無得点試合を許せば、これはセ・リーグでは初めてという危機だったのである。

「やられたと思ったよ。別にええけどな」-。9回に2安打が出たことで、それをしのいだ指揮官・岡田彰布は虎番キャップによる囲み取材でそう言った。だが通路を歩きはじめ、しばらくすると「危なかったなあ…」。やはり指揮官として、野球人としてやられたくはなかったのだろう。

それでもモノは考えようである。ここでDeNAに敗戦したのはある意味ではよかったかもしれない。前日の勝利で2位を確定させた阪神は12日からのクライマックスシリーズ・ファーストステージを戦うが、相手はまだ決まっていない。

3位・DeNAを4位・広島が最後まで追う展開になっており、この日のDeNAの勝利で広島とのゲーム差は「2」になった。最後まで分からないにしろ、広島からすれば苦しい状況になったと言える。

これで3日の横浜スタジアムで1試合を残すDeNAとの対戦成績は今季12勝11敗1分けとなった。甲子園では5勝4敗。対戦成績と同じ「貯金1」だ。混戦を象徴する結果だが、さらに興味深いのは広島戦である。すでに全日程を終えており、結果は12勝12敗1分けとまったくの五分で終えた。だが甲子園では4勝6敗と負け越しているのだ。

もちろん9月になって落ち込みを見せる広島だけに、現在の“強度”ということで言えば違うかもしれない。実際にこの日も負けたわけで、どちらがどうとは言えないのだが、少なくとも甲子園で勝ち越しているDeNA相手の方がいい気もするのが人情か。いずれにせよ巨人を東京ドームでたたき、下克上での「日本一連覇」を達成するために突破したい対戦である。(敬称略)

【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)