ある意味、村上頌樹はエースということだろう。広島の開幕投手・森下暢仁から1回いきなり2点を先制したときは甲子園今季最多の4万2618観衆のほとんどを占める虎党から大声援がわいた。得点も当然だが「これで勝てる」というムードが出たからだ。
だが直後、それはため息に変わってしまう。「本来の投球内容ではなかった」。投手コーチ・安藤優也がそう話したように制球が乱れ、広島打線に攻め込まれる。この回、5安打、2四球で一気に5失点だ。
終わってみれば両軍得点したのはこれだけで2-5の敗戦。「エースが打たれた」というショックは少なからずあったのかしれない。この5失点にはそれだけの重みがあったと思う。首位・広島を追う3連戦の初戦は逆転負けだ。
前日は先発ビーズリーが序盤に3失点したものの追いつき、追い越し、延長11回に近本光司の1発で決着をつけた。敵地で大きな勝利となったが、同時に4時間7分の激闘。勝つには勝ったが疲労も残ったかもしれない。
この朝に阪神は東京から甲子園に移動、そして練習してナイター。対して、広島は前日にホームから移動し、試合もなかった。コンディション的には明らかに負けていたかもしれない。もちろん、それは言い訳にはできないのだが。
「まあ、それはね。この世界では宿命というか、みんなが経験することですからね」。総合コーチ・藤本敦士に「ナインはちょっとお疲れかな」と聞くと、苦笑を浮かべながら、そう話したのである。
とはいえ、この3連戦はかなり重要だ。2戦目は床田寛樹、3戦目は森翔平と左腕が続く。ここで万が一、3連敗など喫するようだと先は長いとはいえ、今後が苦しくなるのは間違いない。そう考えれば、19日の第2戦は相当な覚悟で臨まねばならないと思う。
敗戦の中、明るい面は4番に座った佐藤輝明か。1回に中前打で得点機を生むと、3回に右前打、9回には選球眼を見せて完投の森下から四球を選んだ。この試合、1人で3度出塁したのは佐藤輝だけだった。自分のバットで姿勢で、ナインに「いけるぞ」と思わせるのも4番の仕事だ。
知将と呼ばれ、阪神でも指揮を執った野村克也は「エースと4番はつくれない」と言ったが、村上と、佐藤輝はそんな存在になるかは今後にかかっている。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)




