「盛付(もりふ)劇場」大盛況-。盛岡大付(岩手)がハラハラ、ドキドキさせながら、松商学園(長野)を6-3で振り切り、2年連続16強入りを果たした。7回から登板した背番号1の右腕平松竜也(3年)が四死球、暴投と荒れたが、自らのバットで挽回。終盤は、点を取られたら取り返すしぶとさを見せつけた。先発した左腕三浦瑞樹(3年)の7回の打席で、代打と代走を起用した関口清治監督(40)の采配がズバリ的中した。8強入りがかかる19日の3回戦は、済美(愛媛)と対戦する。

 「盛付劇場」の名プロデューサー関口監督が、1点差とされた7回に粋な演出を見せた。6回まで1失点と好投していた三浦瑞に打席が回ると、菜花友紀内野手(3年)を代打に送る。「何でもいいから塁に出ること」と菜花が振り返った打球は、当たりは良くなかった。だが遊撃手が捕球できず左前へ転がった(記録は遊撃内野安打)。「打ち損じた打球。運が向いていた」と関口監督が笑った。

 演出は続いた。出塁した菜花に代え、三浦奨外野手(3年)を代走に起用。「使われるということは、勝負どころと分かっている」という50メートル5秒9の俊足は、続く1番林一樹外野手(3年)の時にヒットエンドランで走りだした。右翼線への二塁打で一気に本塁を陥れた。続く2番大里昂生内野手(3年)はタイムリー二塁打。脇役だけで貴重な2点を奪った。

 関口監督 三浦が6回に球威が落ちてホームランを打たれた。嫌な予感があって。(7回は)いい打者を出して、いい走者を出す。賭けでした。

 強打のチームゆえに、選手には打って活躍したいという思いが、少なからずある。2安打2打点の林もその1人だったが「センバツが終わってから、関口監督に『勝てば試合はできる』と言われた。そのひと言でスタイルが変わった」とチーム打撃に徹した。7回までクリーンアップ3人は無安打。中軸が打てなくても他の打者がカバーする。1、2番で4本、6~9番で5本の安打を記録。どの打順からでもつながるのが盛岡大付の大きな強み。だからこそ、点を取られてもすぐに取り返して突き放す。

 もっとも「盛付劇場」は、起伏の激しさで甲子園を沸かせる。7回から登板した平松はこの回に2四球を与え、「完璧にモーションを盗まれた」と3盗塁を許して苦笑い。自らタイムリー二塁打を放った直後の8回裏の投球は、暴投で1点を献上。9回は主将の4番比嘉賢伸内野手(3年)が、右越え本塁打のド派手なクライマックス。主役も出番を待っていた。

 岩手県勢初の3季連続甲子園出場。昨夏、今春ともできなかった1大会3勝のチャンスを三たび得た。3回戦の相手は全国制覇の経験がある済美。関口監督は「すごいバッティングをする。食らい付きたい」と言った。またハラハラ、ドキドキの劇場なのか。センバツに続く8強入りへ、役者はそろっている。【久野朗】