11年連続14度目出場の聖光学院(福島)が広陵(広島)に4-6と敗れ、2年連続5度目の準々決勝進出を逃した。エース右腕斎藤郁也(3年)が2点リードの6回から登板するも、プロ注目の中村奨成捕手(3年)に同点となる2点適時打を浴びた。9回には痛恨の勝ち越し2ランを被弾した。初の8強超えを目標に聖地へ乗り込んだが、中村1人に夢を砕かれた。

 打ち上がった打球を、ただ見上げることしかできなかった。斎藤はマウンド上でぼうぜんと立ち尽くしていた。4-4の9回無死、迎えるは中村。変化球を続けて追い込んでの3球目だった。自信を持って投げ込んだ外角高めの138キロ直球を左翼席に運ばれた。

 「自分の中ではベストボール。うまくいけばゲッツーという勝負球だった。あのコースをあそこまで運ばれたことは今までなかった。対戦してきた中で一番いいバッター。思っていた以上に相手が上だった」

 試合後は整列に加わる前から号泣した。相手の校歌を聞いている間も、前田秀紀投手(3年)に支えられて、立っているのがやっと。斎藤は「サビィ(平野、3年)、堀田(陸斗、3年)がよくつないでくれたのに、申し訳ない」と涙に暮れた。事前の分析で低めが得意というデータに基づいて、サインを出した佐藤晃一捕手(3年)は「あそこを振ってくるとは。中村に3安打されて悔しい」と下を向くしかなかった。

 甲子園の応援もはね返せなかった。6回に中村が同点打を放った直後は、球場内全体が拍手で包まれた。9回にも中村が打席に入ると、再び拍手の渦が巻き起こっていた。斎藤は「嫌な空気を感じていた。バッター集中で投げようとした」と振り返る。百戦錬磨の斎藤智也監督(54)も「今大会3試合で一番いいボールを投げていたのに、打たれる皮肉。野球って難しい。最後は中村ワールドになっていた」と肩を落とした。

 日本一への挑戦が終わった。14度の出場も、最高成績は過去4度の準々決勝進出止まり。過去の先輩たちを超えるための1年だった。斎藤は涙をこらえながら、後輩たちに夢を託した。

 「今まで苦しいこと、つらいことを2年半やってきた。聖光で日本一を目指してやってこれて、よかった。先輩からはベスト8以上を超えてくれと言われてきたので、後輩たちにはぜひ超えて欲しい」

 日本一への道は険しい。再び頂を目指す日々が、今日から始まる。【高橋洋平】