「静岡のデレク・ジーター」だ! 第100回全国高校野球選手権大会で、2年ぶり6度目出場の常葉大菊川(静岡)が、益田東(島根)を8-7で破った。静岡大会で打率8割1分8厘を記録した1番遊撃手の奈良間大己主将(3年)が、高校通算21号となる2ランを含む、2安打2打点で伝統のフルスイング打線をけん引した。元ヤンキースのジーターと同じピンストライプのユニホームで、鮮烈な輝きを放った。
今大会NO・1となる驚異の高打率はダテではなかった。4回裏無死二塁、奈良間が内角低めのボール気味の直球を振り抜くと、打球はバックスクリーンにあっけなく飛び込んだ。大歓声の中、ガッツポーズでダイヤモンドを回り、ベンチで高橋利和監督(32)とハイタッチ。
奈良間 最高です! 入ると思いませんでしたが風にも乗って、今までで一番飛びました。
07年センバツ優勝、08年の第90回記念大会の準優勝を誇る同校伝統の「フルスイング」を貫き、チームを勝利に導いた。
172センチ、66キロの細身に、50メートル5秒8の快足。生まれもった身体能力と運動神経の良さはチーム随一だ。2歳から補助輪なしの自転車を乗り回し、高所から転落。その時ケガした唇の上の傷は、今も消えずに残っている。
地元の菊川市出身で、小学校入学前には、当時同校エースだった田中健二朗(DeNA)らが幼稚園を訪問。野球を教えてくれたことがきっかけで、幼稚園時代から「常葉菊川に行く!」と決めていた。3歳上の兄将甫(しょうほ=朝日大3年)も同校OB。入れ違いで同時にプレーすることはなかったが「我が道を行く!」と書かれた帽子を譲り受け着用している。静岡大会からの好調ぶりに、兄からは「俺の弟じゃない!」と驚かれた。
今春は、自身もチームも不調に終わり悩んだが、仲間たちから「お前は考えるな!」と言われて吹っ切れた。「自分が打たなくても、誰かが打ってくれる」。仲間を信じることで肩の荷が下り、打撃好調につながった。「次も打てないと意味はないので、頑張ります」と奈良間。「菊川のリードオフマン」は、一躍全国区となり「静岡のジーター」に。フルスイングを貫きピンストライプをけん引する。【鈴木正章】
<奈良間大己(ならま・たいき)アラカルト>
◆生まれ 2000年(平12)5月8日、静岡・菊川市生まれ。
◆球歴 堀之内小1年から菊川野球スポーツ少年団で野球を始め、1番遊撃手だった。菊川西中時代は小笠浜岡シニアで1番捕手。
◆サイズなど 172センチ、66キロ。胸囲93センチ。足のサイズ27センチ。握力は左右とも60キロ。右投げ右打ち。血液型A。50メートル5秒8。
◆高校 1年秋から3番遊撃手でレギュラー。2年夏も背番号6で戦ったが、県大会準々決勝で敗退。
◆好きな選手 走塁面で日本ハム西川遥輝。
◆家族 両親と兄。
◆趣味 ピアノ。小3から2年間習っていた。
◆進路希望 大学から社会人でプレーするのが夢。