「野球のまち」にある創部120年の伝統校、富岡西(徳島)が21世紀枠で春夏通じて初の甲子園出場を決めた。

学校のある阿南市は、10年に日本で初めて「やきゅうのまち推進課」を開設。還暦野球や少年野球、モンゴルとの野球交流などで、野球を通じた町おこしを行ってきた。

公立で進学校でもある富岡西は、文武両道で甲子園を目指してきた。小川浩監督(57)は私生活や勉学に重きを置いて、地域の清掃活動を行うほか、「テストで赤点を取ったらベンチには入れない」という指導を貫いてきた。選出には「これ以上の喜びはない。感謝、感謝です」と語り、選手への指導については「学校生活があってこそ。地方公立高校の意味がない」ときっぱり。地域への感謝の思いを胸に「さわやかにプレーしたい。しっかり食らいついて。相手の意表を突くようなことをして点を取りながら、こっちのペースに持ち込みたい」と話した。

選手たちは文武両立を、見える形で体現している。末広純平投手(2年)は昨年6月から生徒会長を務める。先生らから推薦を受け「学校の力になれたら」と立候補し、選挙を見事に勝ち抜いた。生徒会活動では、他の役員が部活動への参加に理解を示してくれるといい「周りの人が助けてくれているからこそ、僕が成り立っている。野球でも1人では行き詰まってしまうところもある。周りの人がカバーしてくれることで、チームは成り立っていく。そこはどんなところでも一緒」。部活動と生徒会活動の並行がプラスに働いている。

チームは主軸でもある浮橋幸太投手(2年)がエースを務め、昨秋の四国大会でベスト4。背番号10番を付ける末広は2番手だが、昨秋の登板機会はなかった。「準備を常にして、甲子園で待ちたい。春には完璧な状態にして、浮橋の後を待ちたい」と意気込む。もちろん「地域の方々への感謝を忘れずに、大きなプレーができたら」と笑顔を忘れなかった。

主将の坂本賢哉外野手(2年)は保健委員長を務め、「インフルエンザや風邪の予防を促し、学校全体に周知している」。学校の委員会活動などに積極的に参加しているチームについて「そういう立場に置かれることによって、しっかりした行動ができる」と胸を張る。出場決定から笑顔が絶えなかった主将は「出たからには勝利したい。甲子園初出場で初めて勝って校歌を歌う。それを達成するために、全力でがむしゃらにやりたい」と開幕を待ちわびていた。【奥田隼人】