「平成最後の怪物」に化ける。第91回選抜高校野球大会(3月23日開幕、甲子園)の選考委員会が25日に行われ、出場32校が決定した。「関東・東京」では横浜(神奈川)が大逆転で5年ぶり16度目の出場。昨秋の関東大会2回戦で春日部共栄(埼玉)にコールド負けを喫したが、最速153キロ左腕・及川(およかわ)雅貴投手(2年)の活躍が評価されて出場6枠目をもぎ取った。「高校四天王」と評されるドラフト上位候補が「松坂・菊池級」の活躍で一気に芽吹く。

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怪物の卵には匂い立つ雰囲気があった。大逆転での選出にも及川に浮かれる表情はなし。「選ばれたからには優勝、てっぺんを目指したい」。183センチ、73キロ。スラリと伸びた長い手足をそろえ、堂々と言った。

見たいと思わせる魅力がある。最速153キロ。「横浜に入った時は他の球種も投げていたけど、投げ分けが出来ないので質を高めようと思った」と球種は直球とスライダーのみ。それでも公式戦、練習試合を合わせた16試合87回2/3で防御率1・64、奪三振率13・25と圧倒的だ。春日部共栄にコールド負けし、劣勢に立たされた今回の選考では「うまくいけば優勝できる逸材」と絶賛され、左腕の存在が選出理由になった。左右の違いはあれど球種、成績ともに同校OBで「平成の怪物」と呼ばれた中日松坂を連想させる。

「左の怪物」にも負けない球速で観客を沸かせる。憧れの投手はマリナーズ菊池。09年センバツで歴代左腕最速152キロをたたきだし、同夏には155キロを計測した。追いつけるようにと冬場は下半身を強化。大舞台での記録更新も射程圏内で「出たらいいなと思う。春に良い結果が出れば夏につながって、てっぺんを目指せる」と意欲を示す。

主役の座を射止める覚悟もある。世代ナンバーワン右腕の呼び声も高い星稜・奥川恭伸投手(2年)の名前が出ると「戦えるならば投げ合いたい」と対抗意識をにじませる。高校3年間の目標は「競合でドラフト1位でプロに入団すること」ときっぱり。落選した創志学園(岡山)・西純矢投手(2年)らも含めた「高校四天王」で、誰にも負けるつもりはない。

数々のドラマを生んだ「平成」のセンバツも同元号ではラスト。「平成最後のセンバツなので、名前を知ってもらえたら」と心は高ぶる。「平成最後の怪物」として、名を刻む。【島根純】

◆及川雅貴(およかわ・まさき)2001年(平13)4月18日、九十九里浜に面した千葉・匝瑳市生まれ。須賀スポーツ少年団で野球を始め、八日市場二中では匝瑳シニアでプレー。侍ジャパンU15代表に選ばれた当時から、最速140キロをマークしていた。遠投110メートル。50メートル走は6秒0。183センチ、74キロ。左投げ左打ち。

◆高校四天王 横浜・及川、星稜・奥川に、大船渡(岩手)・佐々木朗希投手、創志学園(岡山)・西純矢投手の両2年生右腕を合わせて「高校四天王」を形成する。佐々木は昨年9月16日、秋季岩手大会1回戦で最速157キロをマーク。エンゼルス大谷をほうふつさせる「みちのくの新怪物」だ。西は昨夏の甲子園1回戦で優勝候補・創成館(長崎)に16奪三振の完封劇。派手なガッツポーズでも話題になった。及川は「西君は気持ちが強い。佐々木君はとにかく速い、奥川君は全てのレベルが高い」とライバルをたたえている。