大船渡(岩手)の最速163キロ右腕・佐々木朗希投手(3年)最後の夏は、不完全燃焼で幕を閉じた。花巻東との決勝で、温存されたまま2-12と大敗した。24日の準決勝前に右肘の内側に違和感を訴えていたことが判明。温存となった一因にはなったが、甲子園にあと1勝としていただけに「投げたい気持ちはあった」と無念さを残した。今夏は4試合、29回435球を投げて9安打2失点。160キロを記録して毎回の51三振を奪っていた。今秋のドラフトで1位指名は確実な右腕だが、将来の活躍を誓うしかなかった。

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佐々木の目に、無念の涙があふれた。両校の整列後、ネクストバッターズサークルに残された金色のバットとロジンバッグに気づき、右手で拾い上げたことが“ラストプレー”。「高校野球をやっている以上、試合に出たい、投げたいと言うのはありました。甲子園は遠かったなと思います。行けなかったことは残念です」。普段はしっかり前を向いて話す190センチの長身。胸を張って会話することはできず、終始うつむき加減で唇をかんだ。

24日の準決勝直前、県高野連の医療スタッフに、佐々木は右肘の内側に違和感を訴えていた。それでも登板に支障はなく、今大会一といえる9回完封の好内容。悪化した可能性は低いが、決勝温存の決断に至った一因ではある。佐々木は「投げられる感覚でした。負けたことに悔いはある。自分が投げたから勝てたというわけじゃない。自分がここまで成長できた仲間に感謝です」と振り返った。

ベンチスタートを国保陽平監督(32)から伝えられたのは、当日の朝練習前だった。先発メンバーの表を全員で確認。口頭でも告げられたが、笑顔で「ハイ」とこたえるのが精いっぱいだった。試合中は仲間の奮闘に拍手と歓声を送り、円陣では中心になって仲間を支えた。「ずっと心の準備はしていました」。出番を待ったが、同監督は試合前から、ケガ予防を含めた将来も見据えて“朗希抜き”を決断していた。ブルペンでの投球練習や、素振りで出場をアピールすることもなし。「監督の判断なので仕方ないです」と自身に言い聞かせるようだった。

U18高校日本代表1次候補に選出されており、今夏の韓国遠征が次の舞台となることが濃厚だ。進路に関しては、プロ志望届を提出して今秋のドラフト指名を待つことになる。いきなりのメジャーリーグ挑戦はないが、日米スカウトが連日集結するなど、ドラフト1位指名に揺らぎはない。「まだ分からないです」と提出時期は未定だが「仲間が頑張ってくれた分、自分が活躍しなきゃいけない」。公立校から甲子園の夢は予想外の結末となったが、今後の期待を背負う覚悟は決まっている。