11年ぶりの甲子園を目指す西日本短大付が八女農に10-0の5回コールドで快勝した。プロ注目の最速143キロ右腕、大嶋柊(しゅう)投手(3年)が3回無失点の好投。「立ち上がりはあまり得意じゃないんです」と不安だった1回は四球や安打で得点圏に走者を置いたが、無失点で切り抜けた。その後は「力を抜いてリリースをしっかり出す意識をして投げたら良くなりました」。2回に9点の援護をもらい、3回3安打無失点、5奪三振でお役御免となった。
憧れは東京五輪の侍戦士でオリックスのエース山本。「マウンドに立っているだけで相手を圧倒できる。相手に『嫌だな』と思わせることができる投手だと思う」。自身は昨秋の県大会準決勝の九州国際大付戦に登板した際、「相手の雰囲気にのまれていた」と圧倒される立場を味わった。チームも惜敗。その日から“由伸マニア”になり、登板試合を全てチェックした。「山本投手のカットボールはすごい。速い変化で真っすぐのように見せることができる」。新しく習得したカットボールをこの日も投じた。山本は9日にソフトバンク戦で7回無失点と好投。大嶋は「昨日は早めに寝たので、これから帰って確認します」と大会中もルーティンを徹底する。
昨冬は50メートルの坂道ダッシュを1日最多100本こなし、上半身だけでなく下半身も使った投球に変わった。帽子のつばの裏側に「大丈夫」と記す。「冬に練習してきたから大丈夫」。マウンドで萎縮しそうな時にはその文字で冬場の鍛錬を思い出し、山本のように相手を圧倒できるオーラをかもし出す。
視察したソフトバンクの岩井隆之アマスカウトは「春先より全然よくなってる。(球の)伸びっぷりがいい」と高評価。打っては2安打2打点と投打に存在感を出した。「チームが勝つのが一番です」。山本は東京五輪の金メダルを、大嶋は甲子園出場を懸けて同じ右腕を振る。【只松憲】
◆大嶋柊(おおしま・しゅう)2003年(平15)7月24日、福岡県筑後市生まれ。古川小1年時に古川ジュニアーズで野球を始める。筑後中では硬式の筑後リバーズでプレー。西日本短大付では2年生の秋から背番号「1」を背負う。球種はスライダーとカットボール、チェンジアップ、ツーシームなど多様。右投げ右打ち。175センチ、74キロ。
○…西日本短大付のプロ注目コンビも勝利に貢献した。攻守に定評がある3番林直樹内野手(3年)は、2回1死満塁で一塁への適時内野安打。3回には犠飛で10点差に広げ、1安打2打点だった。長打力が売りの4番三宅海斗捕手(3年)も、2四球を選ぶなど1安打1打点。西村慎太郎監督は「2人はバッティング練習を見ていても打球の飛距離や速さが違う。そういう意味でも期待しています。チームが困った時は彼らがキー」と期待を寄せた。