プロ注目のスラッガー・渡辺大和三塁手(3年)を擁する高野山が初戦を突破した。

渡辺は「右の大砲候補」として数球団のスカウトが見守る中、痛烈な左前2点適時打を披露。中大で元巨人・阿部慎之助を指導した伊藤周作監督が「パンチ力は慎之助に劣らない」と語る高校通算23発の打棒で、チームを引っ張る。

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渡辺の打球は、あっという間に左前へ抜けた。1点先取後の3回裏2死満塁、流れを一気に引き寄せる2点タイムリー。伊藤監督は「この子が打たなきゃ勝負にならない子が打ってくれた」とほめた。しかし、実は打ち損じだ。

渡辺は「真っすぐ狙いで、甘い真っすぐ。少し力みました。甘いですね」という。伊藤監督も「1つ間違えば(左翼席に)入ってたんですけどね~」と苦笑いした。ボールのあと数センチ下をたたければ、高校通算24号、満塁弾だった確信がある。

元巨人・阿部の中大1、2年時を見ていた伊藤監督が言う。「パンチ力は、当時の慎之助に劣らんでしょう」。当然、差はある。阿部が大学1年時、東洋大との入れ替え戦で3ランを打った話を引き合いに出した。「慎之助は“ここで打ってくれ”という時にヒットでなく、ホームランを打った。渡辺は100%を求めすぎて…。いや、悪いことじゃないんですけど」。期待が大きいから主将を任せ、4番に据える。この日の渡辺は2打数1安打、2四球。全3得点中2点をたたき出したが、そんな程度じゃ満足できない。

渡辺もわかっている。強烈なプロ志向。「難しいかもしれませんが、ちょっとでも(ドラフトにかかる)確率があるなら、と思ってます」。甲子園出場とともに、プロにアピールする打撃を狙う。この日、熱視線を送ったソフトバンクの稲嶺誉アマスカウトは「いい選手。右の大砲候補。打撃は柔軟性もある」と魅力を説明した。

高野山が勝ち続ければ、超高校級右腕・小園健太を擁する市和歌山と対戦する可能性は高い。小園には6月の練習試合で3打席3三振を食った。「(捕手の)松川君のリードも良くて、自分のスイングをさせてもらえず、頭がぐちゃぐちゃになった」。150キロ前後の速球は「対応できる」と豪語した上で「変化球のキレに対応できるか。下半身主導でボールを拾えるように」。巨人・坂本、千葉ロッテ・藤原のタイミングの取り方を参考に理想の打撃を追求してきた。

渡辺は「世代のNo.1ピッチャーを打ちたい」とリベンジを熱望した。ドラフトの超目玉を打ち砕き、甲子園出場とプロ入りの2つの夢をつかみ取るつもりだ。

◆渡辺大和(わたなべ・やまと)2004年(平16)2月16日、和歌山県橋本市生まれ。西部小4年から西部リーグスターズで野球を始め、橋本中央中時は和歌山ホークス。高校通算23発、遠投90メートル、50メートル走6秒3。177センチ、94キロ。