マスターズ甲子園2021が5日、兵庫・西宮市内の甲子園で行われ、滝川二(兵庫)が中部大春日丘(愛知)を7-4で下した。

試合には昨夏コロナ禍で甲子園大会がなかった世代もチーム最年少として出場。思いたっぷりのプレーで聖地をかみしめた。

当時主将だった上田優さんと、同じ世代でともに切磋琢磨(せっさたくま)した上本龍輝斗さん、徳山陽向さんもプレー。上田さんは先制の中前適時打を放ち、「形は違いますが、高校3年間甲子園に向けて練習してきたので、ここにさえ立てれば自分の力が出せる。実力通り出せた」と晴れやかな表情だった。

上田さんは甲子園大会がなくなり、主将だったが「ショックで周りのメンバーに声をかけることもできなかった」と明かした。それでも、出たくても出られなかった甲子園でプレーをし、「違う形でも甲子園で野球ができたのが自分の中でも1つ野球人生に区切りがついた」とようやく区切りをつけられた。

滝川二は甲子園に春夏7度出場。87年春に初出場し、99年夏には8強入り。最後に出たのは15年夏で、この日も甲子園を経験したOBともプレー。徳山さんは「実際に甲子園に現役のときに出られた方もたくさんいて、その人と野球をやってレベルアップにつながった」と感謝。「最年少だったので、失敗してもいいよと。前向きな言葉が後押ししてくれた」と世代の違うOBとの交流も図って濃密な時間を過ごした。

左翼で途中出場し、飛球もアウトにした上田さんも先輩プレーヤーに感化した様子。「うまい下手よりも長く野球を続けている人が一番格好良いと思った。マスターズ甲子園とかで40歳まで現役でいきたい」と今後も出場を願った。

高校で野球は辞めてしまったが、今でも野球との関わりは続ける。失策で出塁し、2点目のホームを踏んだ上本さんは、アルバイトとして小学生や中学生を相手にバッティングスクールで指導に当たる。「甲子園で経験したことは教えられないが、高校球児の思いを教えていきたい」と特別な夏を経験したからこそ伝えられるものがある。

3人はともに夢見た聖地でのプレーを楽しんだ表情を見せた。上田さんは「3人で一緒にプレーできてよかった」。夢絶たれた世代も、マスターズ甲子園でのびのび戦った。【林亮佑】