ぎりぎりまで粘ったが雪辱は果たせなかった。クラークは明治神宮大会4強の九州国際大付(福岡)相手に延長10回、2-3とサヨナラ負けを喫した。初回2死二塁、先発した左のエース山中の中越え二塁打で先制。2回に1度逆転されるも3回に追いつき、2回途中から2番手で登板した右のエース辻田が、9回まで毎回の11奪三振と力投した。チーム全員で見せ場をつくるも勝利には1歩届かず。聖地1勝と佐々木啓司監督(66)の3元号勝利は、夏の舞台で成し遂げる。

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投打で爪痕は残したが勝利をつかむことはできなかった。延長10回1死一、三塁。辻田は、それまで4打数無安打2三振と抑えていた九州国際大付4番佐倉に、左犠飛を上げられた。左翼藤野の返球はわずかにそれ、サヨナラ負け。辻田は「しっかり真っすぐで押していたら。高めの甘い球になってしまった。たくさんの応援や家族も見守ってくれた中、神宮大会と同じ相手に敗れて悔しくてならない」。思わず涙がこぼれた。

冬を越え、たくましく成長した姿を見せることは、できた。昨秋の明治神宮大会では、先発し4回2/3で6安打4失点した相手に、今回は8回1/3、126球を投げ11奪三振1失点。「真っすぐも低めに決まり、内外の投げ分けや高めの真っすぐで三振も取れた。自分の投球ができて楽しかった」。佐々木啓司監督(66)は「辻田は、これまでで一番の投球。甲子園に育ててもらった。できればもう1、2試合、投げさせたかった」と残念そうに振り返った。

監督が入念に考えた新打線も効いた。適時打ゼロに終わった神宮での打順から先発7人をシャッフル。5番から4番に変わった山中が、初回2死二塁から中越えに大きな二塁打を放ち、明治神宮4強腕の香西から先に1点をもぎ取った。山中は「打った瞬間、入ってくれと思った。初回に流れを持ってくる打撃はできた」。4回以降は無安打と、好投していた辻田を終盤援護出来なかったことが、敗因となってしまった。

目の前で逃げていった聖地1勝と佐々木監督の3元号勝利。同監督は「打線が立ち上がりに、いい形で回転したよね。できれば、あそこでもう1点取れていればね。でも積極的にいくクラークらしい打撃はできた。相手投手が良かった。まだまだ研究の余地があるよね」。敗戦から得たものは多い。チーム一丸でさらなる大志を抱き、夏に備える。【永野高輔】

◆3元号で指揮 クラークの佐々木啓司監督は駒大岩見沢時代から昭和の3度、平成の9度に続き令和でも甲子園出場。3元号で指揮した監督は初めて。今大会では大垣日大・阪口慶三監督も同様に3元号目の出場を果たしている。

▽最後の左犠飛を取った藤野 ファールかと思ったが、本塁との距離が近いので刺せるという思いもあった。走者が足が速いのも知っていた。振り返ると冷静じゃなかった。あの一瞬で負けた。悔いが残る。

▽2安打の小野 大会前は打てなくて、試合前の練習で監督から「左足を軸に回るように」と助言を受け、うまくいった。まだ圧倒的に打力が足りない。抜けなかった打球が安打になるように下半身強化したい。

▽2投手をリードした麻原 山中さんはいい球が来ていたけど、そこを上手く使えなかった。辻田さんはまっすぐが伸びていた。一巡したら相手に情報が伝わるので、途中から配球を少し変えようと思っていた。

▽クラーク三浦雄一郎校長(89) (息子の豪太氏とニセコでテレビ観戦)最後まで手に汗握る素晴らしい試合でした。粘って、粘って、粘り抜く戦いぶりはまさに、あっぱれでした。これだけの試合ができるのですから、次のチャンスは必ずつかめると確信しています。

○…好投した辻田の父拓也さん(49)、先制打を放った山中の父伸吾さん(45)も、スタンドからわが子のプレーを見守った。家族7人で応援にかけつけた拓也さんは「中学1年まではチーム事情で捕手だった。投手をやるようになって楽しそう。ここまで連れて来てくれたことが、うれしい」。祖父の代から大工を継いでいる伸吾さんは「(山中には)将来は大工にならなくていい。野球でも何でも、自分の好きな道を進んでくれたら」と話した。

○…スタンドには北海道だけでなく仙台、広島、大阪などのキャンパス関係者も駆けつけ計1000人で声援を送った。キャンパス間をオンラインで結び練習を続けてきたチアダンス部「レイヴス」の札幌白石キャンパスのメンバー、早坂まりな、浜香凜(ともに3年)も元気に応援。早坂は「一生に1度あるかないかの経験をさせてもらい光栄でした」。浜は「いろんな人のいろんな思いが詰まっていることを感じた。私たちも夏に向かって練習するので、また甲子園に連れてきてください」と期待した。

○…深川キャンパスの体育館では、女子バレーボール部を中心とした約20人がパブリックビューイングで応援した。同部の久保花音主将は「辻田投手の力強い投球が印象的でした。負けてしまいましたが、粘り強い試合を見せてもらい感動しました」と話した。「粘り強い守備が勝負の要になる」と共通点を見つけ「野球部は夏の甲子園、バレー部は春高を、一緒に目指していきたい」と決意を新たにしていた。

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