兵庫大会で、神港学園が西宮東との大接戦を制した。延長10回タイブレークから救援した前田凌志(りょうじ)投手(2年)が気合の無失点投球。その裏のサヨナラ劇を導いた。右腕は、闘病中の弟を励ますため、あえて派手なアクションを見せてテレビ越しに勇気と白星を届けた。和歌山ではエース復活の近大新宮が快勝発進した。
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「俺の投球を見ておけよっていう思いでした」。大好きな弟に届ける魂の16球が、春夏通算8度甲子園出場の神港学園を3回戦へ進めた。
2-2の同点で迎えた10回表、2年生の前田はマウンドに送られた。9回裏のサヨナラの好機で投手に代打を送っていたことで、会場では不安の声もあったが、北原監督は「後ろに前田がいたので」とサラリ。信頼できる投手が控えていたことでのチャレンジだったことを明かした。
マウンドに向かう時点から気迫を感じさせた背番号11は、「声を出して投げることで、気持ちが出るので」とパワフルな投球で2奪三振。タイブレークで無死一、二塁から始まる苦境を無失点で乗り越え、ガッツポーズでベンチに戻った。その裏にはタイブレークの走者を務め、勝利の瞬間には、飛び跳ねながら喜びを表現した。
あふれる気合は、その気持ちを弟に伝えるためでもあった。
前田には、現在中学2年の弟がいる。その弟は、中学入学時に病気が発覚し、現在闘病中。大好きだった野球もできなくなっているという。
野球好き3兄弟の次男。大学生の兄は選手生活を終えており、「野球が大好きなみんなの中で、今やれているのは自分だけ。自分がやるしかないっていう気持ちで投げました」。
1回戦は球場で弟から応援を受けたが、この日は病院から映像での観戦になった。「画面越しにでも、自分の思いを伝えられたらいいなと思ったので」。全身で感情を爆発させていたのには、そんな理由があったからだった。
自身を「元々はおどおどした感じだったんです」という右腕は、強さも身に付けた。「また喜びを伝えたい」。頼もしくなった兄は、次戦でもほえて、飛び上がって喜ぶような活躍を誓い、優しい笑顔を見せた。【永田淳】

