<全国高校野球選手権:クラーク7-1前橋商>◇8日◇1回戦

高校野球のドラマは、勝った者にだけ生まれているわけではない。日刊スポーツでは今夏、随時連載「君がらんまん」で、勝者だけでなく敗者にもスポットを当てた物語をお届けする。

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仲間を信じて全力で腕を振った。先発した前橋商・坂部羽汰投手(3年)は試合後、一塁側アルプスにあいさつをすると、こらえていた涙が止まらなかった。「最高の甲子園だった」。泣きながら言葉を絞り出した。

仲間の大切さを感じた高校野球だった。昨夏、新チームが始まると、野手の守備を信じ切れず、「自分が三振をとれるようにならなくては」と、独りよがりな投球が続いた。このままでいいのかー。悩む坂部の目の前で、泥まみれになって守備練習に励むチームメートの姿があった。「改善しようと思ってくれるみんなが心強かった。自分ももっと頑張ろうと思った」。春を迎え、持ち味の打たせて取る投球に磨きをかけた。

甲子園でも仲間に助けられた。初回、観客1万6000人が見守る中でマウンドへ。今まで経験したことのない景色に「少し圧迫感があって緊張してしまった」と制球が乱れた。無失点に抑えたが緊張はほぐれぬまま2回のマウンドへ。ベンチを見ると、そこにはいつもの光景があった。みんなが人さし指を頬に当てて、「笑顔」のポーズ。「笑顔で最後までやろう」と意味を込めて県大会初戦から始めた。「冷静さを取り戻して応援もしっかり聞こえるようになった」。初めての聖地を楽しんだ。

約2年半の高校野球生活が終わった。「仲間を信じて投げられるようになった」。今は涙でもいつか、笑顔で振り返る日がくる。【星夏穂】

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