「ミラクル文星芸大」は甲子園でも健在だった。
2点を追う8回無死一、三塁。7回からマウンドに上がった工藤は、狙い通りの甘く入った直球を捉え右前打にすると、右翼手が後逸。その間に一、三塁走者、さらには工藤もホームを駆け抜け、逆転に成功した。「みんなが笑顔で待っていた。うれしかったです」。16年ぶりの甲子園勝利に、普段はおとなしい性格のヒーローが笑みを浮かべた。
栃木大会決勝は4点差を追い付かれた直後の9回にサヨナラ本塁打でセンバツ出場の作新学院を破り、甲子園出場を決めた。その自信から、リードされても選手たちに焦りはない。5回終了後のクーリングタイムには、高根沢力監督(50)が「甲子園は奇跡が起きるグラウンドなんだよ。それは、本人やチームが一生懸命勝ちたいとか、強い思いがないと起きないんだ」と選手たちの背中を押した。7回には2点を返し、その裏、3番手で登板した工藤は「チェンジアップで打たせてとった」と、3者凡退で流れを引き寄せた。
諦めなければ必ず何か起こる-。高根沢監督が日ごろから選手たちに伝えてきた言葉だ。工藤は「ラッキーボーイになったのは始めて」と控えめに話したが、甲子園での勝利を信じ、県大会終了後も地道に遠投で調整を続け、運を引き寄せた。「3勝が目標。次も一戦必勝で勝ちきりたい」。その言葉には自信があふれていた。【保坂淑子】

