“隼人のムネリン”が最激戦区をかき回す。第96回全国高校野球神奈川大会(7月12日開幕)の組み合わせ抽選会が7日、全国のトップを切って横浜市内で行われた。全国最多190校が参加する神奈川で熱視線を浴びるのが、横浜隼人の宗(むね)佑磨内野手(3年)だ。プロが注目する高い身体能力と、高校通算24本塁打のパワーが持ち味。1回戦(14日、保土ケ谷・神奈川新聞スタジアム)は横浜商大高との好カードとなり、ノーシードから09年以来の甲子園を目指す。また、連覇を狙う横浜は、今夏限りで退任する小倉清一郎コーチ(69)の有終の美を飾るべく、結束を強めた。

 横浜隼人の「ムネリン」は、薩摩隼人の本家を上回る潜在能力を秘めている。

 宗はガーナ出身の父と日本人の母を持つ。50メートルを5秒8で走る俊足。川崎宗則内野手(33=ブルージェイズ傘下3Aバファロー)と同じ右投げ左打ち、憧れの存在にヤンキース・イチロー外野手を挙げるなど、共通点が多い。スカウトが「全身バネのよう」と評する身体能力を誇り、リーチが長く、体はしなやか。宗も「ジャンプ力は自信があります」と胸を張るように、今春の身体能力テストでは、立ち幅跳びで2メートル69センチ。2位以下を大きく引き離し、校内1位だった。要の遊撃を任され、縦横無尽にグラウンドを駆け回る。

 7日に行われた愛工大名電(愛知)との練習試合で1本追加し、高校通算は24発になった。パワーを支えるのは「おにぎり」だ。「食事も練習のうち。お米を食べて体を大きくすること」というチーム方針に従い、1年時は1日3食に加え、おにぎり20個を食べ続けた。宗は「最初は気持ち悪くなって残していました」と振り返るが、今ではノルマの15個を半日で平らげる。食べる量も1日3合から5合に増え、入学当初64キロだった体重は75キロまで増えた。パワーの源になり、2年から本塁打を量産した。

 昨春の県大会準々決勝では、桐光学園・松井裕樹投手(現楽天)から2安打を放った。初安打は直球を中前に、2本目は宝刀スライダーを下から拾うようにして右前へ運んだ。水谷哲也監督(49)は「(直球、スライダーの)両方を打った選手は、そうはいないのでは。センスが一番ですが、やってきたことが身についているし、成長を感じました」と、技術面の成長に目を細めた。

 最後の夏こそ、自分のバットで勝利を呼び込む。「去年、松井さんから打った時もチームは勝てなかった。自分が打ってチームが勝てるよう、もっとチャンスで打ちたいです」。ハマのムネリンは、真のヒーローになることを誓った。【和田美保】

 ◆宗佑磨(むね・ゆうま)1996年(平8)6月7日、東京・武蔵野市生まれ。小3で野球を始め遊撃手兼投手。玉縄中では軟式野球部に所属。横浜隼人では高1の秋から外野手としてベンチ入りしている。趣味は洋楽を聴くことで、マイケル・ジャクソンや、米R&B歌手Ne-Yoがお気に入り。181センチ、75キロ。右投げ左打ち。