<高校野球宮城大会:仙台育英4-0一迫商>◇24日◇準決勝

 一迫商が仙台育英に0-4で敗れ、初の決勝進出はならなかった。6月14日の岩手・宮城内陸地震の被害を克服したナインは一丸となり、5年ぶり2度目の4強入りを果たした。この日の午前0時26分ごろ、再び最大震度6強の岩手北部地震が発生。地震とも戦った一迫商が、悔いなく夏を終えた。

 一迫商ナインは、最後まであきらめなかった。0-4で迎えた9回2死、主将の熊谷健太郎二塁手(3年)がチーム2本目のヒットとなる中前打で出塁。追い詰められてからの粘りの一打に、ベンチも応援席も大声で盛り上がった。後続が倒れ、得点をスコアボードに刻むことはできなかったが、03年以来2度目となるベスト4に、ナインは涙をこらえ、胸を張った。

 岩手・宮城内陸地震で、最大震度6強の揺れに見舞われた栗原市の学校は大きな被害を受けた。そして、第1シード仙台育英との対戦を約9時間半後に控えたこの日午前0時26分ごろ、岩手北部地震が発生。栗原市は震度5強という再び強い揺れに襲われた。それぞれの家で、ナインはふとんから跳び起きたという。それでもすぐに就寝し、早朝4時に起床して打撃練習を行った。熊谷貞男監督(53)は「練習でも試合でも、今までよりバットが振れていた」。熊谷主将は「地震のせいで練習の時間が減ったかもしれないけど、その分、みんなで集中して練習してきた」と、地震の影響はなかったと強調した。

 05年センバツ出場(21世紀枠)以来の、初となる夏の甲子園には届かなかったが、栗原市内の出場校5校で唯一勝ち進み、被災した地元に勇気を与え続けてきた。「いろんなことがあったけど、たくさんのことを学べてよかった。甲子園という目標は、1、2年生が達成してくれると思う」。熊谷主将は、逆境を乗り越えつかんだベスト4の自信を胸に、後輩たちが夢をかなえてくれる、と信じていた。【由本裕貴】

 ◆一迫商と地震

 岩手・宮城内陸地震では、当時チームは秋田遠征中だったため、けが人はなかったが、グラウンドに亀裂が入り、照明設備が破損した。しかし、地元関係者の協力で5日後には復旧。学校から約1キロ離れたグラウンドへ移動する際には、ナインは住民から激励の言葉を送られた。試合では、学校のバレーボール部員など仲間たちが作った「栗原に元気を」のボードが応援席に掲げられた。