<高校野球宮城大会>◇26日◇決勝

 仙台育英が日本記録で2年ぶり22度目の甲子園出場を決めた。雷雨で合計2時間22分の中断にも打線は湿らず、気仙沼向洋に28-1で圧勝。夏の地方大会決勝戦での戦後最多得点となった。最速145キロ左腕のエース木村謙吾(3年)が5安打1失点で4連続完投勝利。今大会40イニング自責0(失点2)で締めた。攻守に力を発揮した個性派集団を主将の井上信志三塁手(3年)がまとめた。

 雷雲やゲリラ豪雨が襲っても、2度の中断があっても、仙台育英ナインの集中力は途切れない。出場10人全員安打全員得点で28点。今大会の最後に32安打と打線が大爆発した。

 口火を切ったのは主将井上。3回1死から、しぶとく中前打を放つと、5番木村の犠打後、4連続安打で4点。4回には1死二塁から左翼線へ適時二塁打を放ち、今大会初打点。「振ったところにボールが来たって感じです」と言うが、主将の活躍にチームの雰囲気は一気に盛り上がった。

 6回裏2死一塁から24分間、7回裏1死一、二塁から1時間58分、合計2時間22分、中断した。一時、ベンチ裏に引き上げたナイン1人1人に井上は「絶対晴れっから大丈夫だ」と声を掛けた。エース木村はサンドイッチと五目おにぎりをほおばりエネルギーを補充。「番狂わせが多い大会だった。自分たちはそうならないようにと思っていた」(井上)と全員が強い気持ちを持ち続けた。試合再開後15得点を挙げたのがその証拠。

 努力の主将がチームを作り上げた。08年秋から1日1000本スイングを欠かさなかった。その姿に胸を打たれたチームメートが昨年秋から歩調を合わせ、ともにノルマをこなした。母富貴子さん(46)は「昔から努力家でした」。小学時代は試合前の調整を徹底。監督に「粘り強くなるため納豆を食べろ」と言われれば母に「買ってきて!」と頭を下げた。佐々木順一朗監督(50)も「彼が一番努力して、身をもってみんなに示してくれた」とたたえた。

 「苦労が報われました」。井上の目がキラリと光る。だが次の瞬間、表情を引き締め「目指してるのは全国制覇です」。89年夏、01年春の甲子園準優勝を超える。日本記録の次は、東北勢初めての深紅の大旗だ。【三須一紀】