<全国高校野球選手権:聖光学院1-0広陵>◇12日◇2回戦

 聖光学院(福島)は、歳内(さいうち)宏明投手(2年)が春のセンバツ4強の広陵(広島)を散発5安打に抑えて完封した。

 あどけない表情の2年生が、甲子園デビューを鮮烈に飾った。聖光学院・歳内は、直球と同じ軌道から打者の手元でスッと消えるスプリット・フィンガード・ファストボール(SFF)で手玉に取る。8回表2死二塁のピンチでは、プロ注目の4番丸子と対決。カウント2-1から内角低めにSFFを投げ込むと、腰砕けのスイングで三振に仕留めた。「力のある打線にスプリットが通用した」。優勝候補の広陵相手に散発5安打、三塁を踏ませぬ投球で完封勝利を挙げた。

 中学時は「マー君」にあこがれ、楽天田中が所属していた宝塚ボーイズに入った。08年冬、田中が自主トレで練習場を訪れた時には、緊張して話しかけることができなかった。それでも「遠くにいてもオーラがあった」とプロの雰囲気を感じた。以来、携帯動画サイトでフォームをまねた。当時を知る奥村幸治監督(38)は「能力を比べると田中が少しだけ上。歳内はこれから。『第2のマー君』になれる」と期待を寄せる。

 負けん気の強さも「本家」に似ている。中学時は「絶対に宝塚(ボーイズ)に入るから」と聞かなかった。決心したら前進するのみ。兵庫・尼崎市の実家から片道約50分をかけ練習場まで自転車で通い続けた。母美佐子さん(42)が「野球だけは無理してでも頑張る」と認める野球少年が、夢をかなえた大舞台で実力を発揮した。

 福島大会では同じ2年生の芳賀が背番号1だったが、今はエースナンバーを背負う。「調子は悪かったけど100点の投球ができた。ホッとしているけれど、全国制覇が目標。安心はしていない」。この日、スタンドで見守った父信昭さんの48歳の誕生日。勝利という最高のプレゼントを贈った。【湯浅知彦】