日本ハムの高卒3年目、太田賢吾内野手(20)がプロ初本塁打をマークした。7日楽天戦(東京ドーム)で4点を追う3回の先頭、同学年の安楽から右翼席へ運んだ。今季1軍デビューを果たし、通算23試合58打席目での初アーチ。持ち味の守備だけでなく、力強い打撃でもアピールした。東京ドームの今季最終戦でチームは2連敗も、将来のレギュラー候補が存在感を示した。

 心地よい感触が、初めて手のひらに刻まれた。4点を追う3回。先頭の太田は「いったと思いました」と会心の当たりを飛ばした。狙い球は定まっていた。カウント3-1から、同学年の楽天安楽の高めに浮いた138キロ直球をひと振り。右翼席に吸い込まれた打球を確認し、二塁ベースを蹴って腹の底から「よっしゃー!」。プロ3年目の初アーチだった。

 全国的には無名の川越工から、プロの道を切り開いた。14年ドラフト8位で入団。横浜の浅間と高浜、九州国際大付の清水ら、高卒同期には実力者がいた。「アイツらとはスタートから違う」。プライドを捨て、開き直ってわが道を歩むと決めた。地肩の強さを生かし、守備に磨きをかけた。中島に自らを重ね、ファウル打ちを特訓したこともあったが、バットで結果を残した。

 常に刺激を受けてきた存在が、身近にいた。1歳上の兄和輝は東都リーグの日大で中軸に座るプロ注目選手。所沢中央シニアでは一緒にプレー。堅守が売りの名物兄弟だった。リーグ戦まっただ中で、この日本塁打を放った兄の成績チェックは欠かさない。「顔は全く似ていないけど、野球センスは一緒じゃないですかね」と、兄のプロ入りを心待ちにしている。

 この日、新聞社のインターンで球場を訪れていた、所沢中央シニアで1学年下の峯岸稜馬さん(19)と3年ぶりに再会。試合後には「奇跡だよ!」と喜びを爆発させた。峯岸さんは「シニアの時、失策しているイメージは全くなかった。ホームランの記憶もないですけどね」と後輩の前で、意外性抜群の姿を披露した。

 チームは2連敗も、将来のレギュラー候補が頼もしく存在感を見せた。栗山監督は「若い人たちが、いい感じで前に進んでいる」と成長を喜んだ。太田は「僕はホームランバッターじゃないので、ヒットを積み重ねていきたい」。足元を見つめ直し、さらなる飛躍を見据えた。【田中彩友美】

 ▼太田がプロ1号をマークし、日本ハムのドラフト入団選手で今季プロ初本塁打を放ったのは石井一、松本、中島、横尾に続き5人目。新外国人ドレイクは8月30日に1号を記録。

 <太田賢悟(おおた・けんご)アラカルト>

 ◆生まれ 1997年(平成9)1月19日埼玉・川越市。

 ◆球歴 小学2年から始め、川越東中では所沢中央シニアに所属。川越工では1年秋から遊撃レギュラーで投手も兼務した。3年夏は埼玉県大会5回戦敗退も打率5割2分9厘。

 ◆ドラフト 14年8位で入団。高校2年秋の埼玉県大会で、今成スカウトが「ふらっと見に行った時に見つけた。目を見張ったのは送球の正確さ」と評価。

 ◆家族 両親と兄。兄和輝は東都リーグ日大の4年で今秋のドラフト候補。

 ◆プロ実績 今年7月18日楽天戦(函館)の代走でプロ初出場。プロ初先発の同23日西武戦(メットライフドーム)でプロ初安打初打点をマークした。

 ◆サイズ・タイプ 186センチ、81キロ、右投げ左打ち。