7回の矛(ほこ)と盾(たて)の対決が、雨中の熱戦の勝敗を分けた。無死一塁から楽天浅村栄斗内野手(29)が決勝の28号2ラン。ここまで17戦で失点ゼロ、防御率0・00のロッテのセットアッパー唐川侑己投手(31)のカットボールを完璧に仕留めた。楽天は今季初の4連勝で2位ロッテと3・5ゲーム差。パの上位争いが、いよいよ熱を帯びてきた。

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唐川が打たれる時が来てしまった。今季17試合、17イニング無失点。強固な盾でさえ、楽天浅村に力で押し込まれた。頼れる「7回の男」を支えてきた魔球カットボールが、甘く入った。手痛い決勝2ラン。マウンド上の表情が固まった。

いつもと空気が違った。7回、先頭鈴木大への入り3球で、捕手吉田のサインに6度首を振った。カットボールが低めへ抜ける。安打を許し浅村を迎えた。主砲にもカットボールを投げ続け、ようやくリズムを作ったが、5球目が初めて高めに抜けた。一度、呼吸を整える。吉田のジェスチャーは「低く」。しかし6球目のカットは、甘かった。

最善策だった。チームのイニング別得点最少の6回に、楽天涌井から3得点。同点とし、流れができた。7回に唐川以外の選択肢はなかった。石垣島キャンプでは先発投手として調整。ジャクソンの退団で代役を任された。吉井投手コーチも「のっぴきならない状況で手伝ってもらっています」と全幅の信頼を寄せる。

そんな強力セットアッパーでさえ浅村にやられた現実は、受け止めねばならない。井口監督は「1発だけは打たれちゃいけないと思います」と悔やんだ。僅差を制するのがロッテ。唐川の防御率はまだ1・00。この先も経験豊富な右腕にタフな7回を託し、進むだけ。息づかいの激しいイヌワシにおびえてはいられない。首位と1・5ゲーム差。手を伸ばせば届くタカに食らいつく。【金子真仁】