阪神佐藤輝明内野手(22)が復活の2安打を放った。屈辱のスタメン落ちから一夜明け、「6番右翼」でDeNA戦に先発復帰。7回に右前タイムリーを放つなど2安打1打点と打撃の復調をアピール。この日、球宴のホームランダービー出場選手が発表され、新人では異例の選出となった。16年日本ハム大谷以来となるダービーVと球宴MVPの2冠に期待がかかる。

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「御礼」をバットに込めた。7回無死二塁。佐藤輝は必死に腕を伸ばした。追い込まれてから左腕坂本の外角スライダーを打ち返すと一、二塁間をしぶとく破った。「食らいつけるように頑張りました」。6試合ぶりの打点で3点差に迫った。前夜にはプロ初の代打安打でサヨナラ劇を導いた。“今日もまた…”と甲子園の虎党に夢を見せた。

ファンの期待を力に変えた。この日、球宴ホームランダービー出場選手が発表され、最多の1万7027票を集めた。並み居る長距離砲を抑え新人では異例の選出。「選んでいただいたからには、打てるように一生懸命バットを振りたい」。新人初のセ・リーグ最多得票となったファン投票に続く快挙を喜んだ。

練習前には、ひと足先に行われたメジャーのホームランダービーをチェック。日頃からYouTubeで動画を見る“メジャー通”のルーキーはうなった。

「いや~、格が違いますね、飛距離とか。ちょっとでも近づけるようなバッティングをしたい」

エンゼルス大谷ら世界最高峰のパワーヒッターに刺激を受け、9戦ぶりのマルチ安打。7月は打撃が下降線でこの日を含めて打率2割2分5厘。苦しんだが、復調の兆しを見せた。矢野監督は「苦しみながらでもヒットが出るってことは気分的に違う。ただ、テルらしいスイングがまだ少ない。そういうのが増えていってくれたら」とさらなる上昇を願った。

ホームランダービーで優勝し、さらに球宴MVPとなれば16年大谷(日本ハム)以来の“2冠”。今後の戦いへ大きなはずみとなるはずだ。舞台は、交流戦で本塁打を放っているメットライフドームと楽天生命パーク。「相性がいいっていうところを見せられるように。優勝できるよう頑張っていきたい」と宣言した。

チームは連夜の逆転劇とはならず、6点差で完敗も2位巨人が敗れ、前半戦の首位ターンが決まった。「いい形で終われるように。先制点を取れるように頑張っていきたい」。開幕から周囲の度肝を抜いてきた怪物ルーキーが、豪快アーチで前半戦を締めくくる。【中野椋】

◆ホームランダービー 球宴の試合前に行う本塁打競争。2年間のブランクを経て08年に再開され、ファン投票で選ばれる形式に変わった。18年からセ・パ各4人が出場し、第1、2戦を通じて試合前にトーナメント方式で優勝を争う。現行の方式となってから、新人の出場は佐藤輝が初。