123球目、最後の打者を右邪飛に打ち取り4安打完封を果たしても、日大・赤星優志投手(4年=日大鶴ケ丘)は表情を変えなかった。「投げ終わって、ホッとしました」と、瞬間の心境を打ち明けた。今春2部優勝し、入れ替え戦を制した。チームに17年秋以来4年ぶりの1部白星をもたらした。

ピンチでも動じず、粘り腰を発揮した。今春1部優勝の国学院大を相手に、2回、3回、4回、8回と得点圏に走者を背負ったが、あと1本を許さない。3回には、2死二塁で今春MVPの山本ダンテを得意のカットボールで空振り三振。すると、直後に味方が1点を先制。自らの腕で流れを呼び込んだ。

最速は152キロを誇るが「ランナーを出しても、持ち味である低めの変化球を意識しています。力じゃなく、コントロールで勝負するように」と話す。下級生のころは、三振狙いの気持ちが先に出た。だが、甘く入ると打たれてしまう。「初球から変化球をコースに投げれば、相手は打ちづらい。打たせて取ろう」と意識を変えたことで、一皮むけた。

東都開幕戦に、12球団のスカウトが集まった。既にプロ志望届を提出した赤星だが「チームとしても、個人としても、優勝を目指しています。試合に集中できました」と浮つくことはなかった。初めて生で視察したという西武渡辺GMが「いろんな球を使って抑えられる。投球を知っている印象を受けた」と評価すれば、巨人水野スカウト部参与も「常に冷静。投球術を知っており、ゲームメークできる」と話した。

1部初陣で勝利した片岡昭吾監督(43)は「打たせて取る。練習通り、やってくれた」と目を細めた。ウイニングボールの行方を問われると「欲しいかな」と控えめに、近くに座る赤星をちらり。赤星は「あとで監督さんに渡そうと思ってました」と答え、場を和ませた。【古川真弥】