<日本ハム4-3オリックス>◇17日◇札幌ドーム

苦境に立たされた時ほど、その人の本質が見えてくる。現役の大半を2軍で過ごした斎藤から、学んだことだ。時に「人を見る目がないのかもしれない」と悩み、「野球がこんなに楽しいなんて思わなかった」と無邪気に笑う。ふと「引退した後のことを考えるんです」と漏らすこともあった。注目を浴びた素顔は、人間味あふれていた。

昨年末だった。「これは、野球を辞めるときに話すことだと思いますけど」と切り出された。ゆっくりと言葉をつなぐ様子に、秘めた大きな覚悟を感じた。

斎藤 ファイターズには、人として尊敬できる人が多い。野球選手に対してのリスペクトがすごく強かったり、本当に環境に満足しています。そこに対して、ちゃんと義理を果たしたいという思いは強いです。

今年2月の春季キャンプ初日。右肘靱帯(じんたい)断裂のためリハビリで幕を開けた。屈託のない笑顔で「今年、1勝したい。出来たら奇跡なんです」と話していた。「1勝」と「奇跡」を信じた瞳は、最後の使命だと物語っていた。

奇跡を起こせなかった。それでも満身創痍(そうい)になりながら、11年間のプロ生活を全うした。その姿は、最後の瞬間まで輝いていた。【日本ハム担当=田中彩友美】