阪神佐藤輝明内野手(22)が決勝点につながる二塁打を放った。

広島戦に4試合ぶりに先発出場して3回に右中間を破った。敵失の間に三塁まで進み、坂本誠志郎捕手(27)の犠飛で先制のホームを呼んだ。長打は2カ月ぶり、甲子園では3カ月ぶりの安打で、勝利に貢献した。7回に代打を送られた際、球場を包んだ落胆の声は期待の裏返し。19日から2・5差で追う首位ヤクルトと甲子園で2連戦。テルの一打から逆転Vへつなげたい。

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全力で腕を振った。187センチ、94キロが進むにつれて、どよめきが大きくなった。甲子園では後半戦初の「Hランプ」点灯。三塁に到達した佐藤輝は、白い歯をチラリと見せた。「めちゃくちゃ久しぶりだったので、うれしかったです」。

3回。先頭で広島九里のスライダーを引っ張った。右中間を割る二塁打は、右翼鈴木誠の失策を誘う。4試合ぶりのスタメンで4試合ぶりの安打を放ち、無死三塁。8月19日DeNA戦で23号を放って以来、約2カ月ぶりに飛び出した長打に沸いた直後、坂本の中犠飛で先制&決勝のホームを踏んだ。

「今日は良いスイングができたと思いますし、状態は良いと思う」

そう言えるだけの準備を重ねてきた。この日のフリー打撃では体の開きを抑えるかのように逆方向を狙い、左中間へ快音を連発。スタメン落ちした直近3試合は、イニング間に右翼手とのキャッチボール役に走り、ベンチで仲間のプレーをじっと見つめた。

「準備の仕方であったり、代打の難しさとかベンチでの役割とか、いろいろ学ぶことが多いですし、これからに生かしていきたい」 前日17日の広島戦は1発なら逆転サヨナラの9回1死一、二塁で、代打で空振り三振に倒れた。それでもこの日、7回に代打が告げられるとスタンドからは「え~」と虎党の声。それほど、背番号8の1打席には流れを変える力がある。

甲子園では7月14日DeNA戦以来、実に3カ月ぶりの安打。悩める中でも1本を出した佐藤輝に矢野燿大監督(52)は「後半苦しんでいますけど、良いヒットでした」とうなずいた。首位ヤクルトがゲームのなかった日に1点差を制し、優勝マジックは4のまま。19日からは甲子園でヤクルト戦。連敗なら目前で胴上げを許してしまう。屈辱だけはなんとしても阻止する。

「もうね、勝つしかない。全員でつなげて全員でやり切ります」と指揮官が言えば、佐藤輝は「1試合1試合、1打席1打席に集中して、目の前の1試合をしっかり戦い抜く」と一戦必勝を誓った。復活の気配漂うルーキーとともに、矢野阪神が最終決戦に挑む。【中野椋】

▼阪神が19、20日のヤクルト戦に連敗すれば、ヤクルトの優勝が決まる。21日以降に、阪神が4勝しても最終成績は78勝57敗8分けで勝率5割7分8厘。ヤクルトは同時期に6戦全敗しても、73勝53敗17分けの5割7分9厘となり、阪神を上回るため。