やっと、勝利の女神がほほえんでくれた。3年目の日本ハム生田目翼投手(26)が念願のプロ初勝利を挙げた。今季初登板初先発となった西武23回戦(メットライフドーム)で気持ちを前面に出す力投を見せ、6回1安打1失点。通算8試合目の登板で白星を手にした右腕の頑張りもあり、チームは4月1日以来の最下位脱出に成功した。

ウイニングボールを手に、生田目は言った。「野球をやっていて良かったです。やっとチームに貢献できた」。覚悟を持って臨んだ試合だった。「シーズン終盤で、もう戦力外とかも出ている」。社会人からプロに進んで3年目。チームの残り試合も10試合を切っている中での今季初登板初先発。以前なら、ネガティブになって結果も伴わなかったが、この日は違った。「楽しんでやろうと、開き直ってやっていました」。

ピンチもチャンスに変える。そんな思考の転換を昨オフから意識して取り組んできた。1年前は自宅の壁に「ポジティブ」と書いたA4サイズの紙を貼って、メンタル強化の一助とした。「今は、してないですけど…」と、さすがに紙は外したが思考、意識は変わった。「走者が出てもゲッツーチャンス。どこに投げればゲッツーが取れるかなとか、今日も思いながら投げられた」。

2回1死一塁では川越を併殺打。ポジティブ思考が結果につながった。昨季までとは違う成長した姿で、背水の先発登板を飛躍へのスタートに変えることができた。

試合が終わると、栗山監督が後ろから両肩をつかんできた。驚きながら振り返ると、祝福とともに、今後の道しるべになりそうな言葉をもらった。

「普通にやりなさい」。

栗山監督は「もともと、いいボールを持っているんだから。今まで1軍では、ああやってバランスよく投げられなかった」。だから、普通にやりなさい。生田目も、その言葉をしっかり受け取ったはずだ。「やっと監督に(初勝利を)見せられた。なんとか結果で恩返しできたら」。生田目は力強く、前を向いた。【木下大輔】

◆生田目翼(なばため・つばさ)1995年(平7)2月19日、茨城・常陸大宮市生まれ。水戸工では1年秋から遊撃手でレギュラー。2年秋からエース投手となり、3年夏に県大会8強。流通経大では東京新大学リーグで3年春に最多勝(6勝)、最優秀投手、MVPを獲得。日本通運では2年目の18年に都市対抗準優勝に貢献。18年ドラフト3位で入団し、1軍初登板は19年6月1日オリックス戦。昨季までの1軍成績は7試合0勝2敗、防御率7・71。今季推定年俸920万円。176センチ、88キロ。右投げ右打ち。