夢をつないだのは輝だ。阪神佐藤輝明内野手(22)が、しぶといヒットで坂本の同点適時打を演出した。

1点を追う7回2死。目の前でロハスが粘り、フルカウントから7球目の際どい内角球を見逃し四球を選んだ。内野が集まり一呼吸置いた広島森下の初球を逃さなかった。「もう、とにかく気持ちで打ちました」。内角低め149キロに詰まらされながらも、パワーで振り抜き左前に落とした。

判断よく一塁走者ロハスが三塁へヘッドスライディング。一、三塁とチャンスを広げ、坂本の同点打を呼び込んだ。近本が右太もも裏の張りで欠場。「7番右翼」で4試合ぶりにスタメン出場した佐藤輝が、大きな仕事を果たした。

難敵森下を3打席目で攻略した。3回の第1打席は7球目に空振り三振、5回の2打席目も9球粘ったが、空振り三振で今季の三振数は171となり、シーズン記録では歴代8位となった。残り2試合で同7位の15年西武中村の172、同6位の04年ヤクルト岩村の173も超える可能性が出てきたが、この日もファーストストライクから積極的に打ちにいった。7回の安打は対森下11打席目で2本目のヒット。負けていればヤクルトの優勝マジック3が減っていた一戦で、3打数1安打でもその1本が値千金だった

21日の甲子園での中日戦前の練習では、本拠地で時間にも余裕があるため、珍しい練習にも取り組んだ。通常の置きティー後に、北川打撃コーチが目の前の高さに投げるトスにバットを大根斬りのように上から出すティー打撃を繰り返した。近大時代から「置きティーの方が同じ位置に球があるし、投手の球をイメージしやすい」とこだわってやってきた。だが、今は首脳陣のヒントも大いに得ながら、懸命に出口を模索する中でのHランプだった。

24日の広島先発九里には18日の対戦で、右中間へ二塁打を放った。甲子園では3カ月ぶりとなる安打で、先制点を演出。今季9打数3安打と相性もいい。チームは逆転Vへのムードが高まってきた。前半戦20本塁打でチームを引っ張ってきた規格外ルーキーが奇跡の輪に加わる。【石橋隆雄】

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