千両役者が帰ってきた。オリックス吉田正尚外野手(28)が右尺骨骨折から39日ぶりに復帰した。

「1打席目で勢いをつけたかった。甘い球をいこうと思った」。初回は初球の148キロをいきなり強振して痛烈な中飛。場内のボルテージはMAXだ。狙い通り、その後に先制点が生まれた。3回の第2打席は、シンカーをジャストミートして中前打。2年連続の首位打者はわずか3球で完全復活を印象づけた。

10月2日の試合で骨折した右手首の状態は「天気によっても違う。詰まったりバットの先に当たると痛い」という。仲間が優勝してくれて、CSの初戦が4日延びた。たった1カ月。間に合わせてくれた周囲のサポートに「本当に感謝しています」と頭を下げた。

試合前、中嶋監督から「今日行くぞ」と声をかけられた。「(事前に)特に問題ないですと話していた。ビックリはしなかった」。自宅を出る時から心は決まっていた。2つのツノのついたジバンシーのキャップを私服コーデに選んだ。「今日、勝負だから、この日のためにね。これやと思って」と笑わせた。

オリックスにとっては数字以上に大きな1点、そして大きな勝利になった。主砲は「日本シリーズ、最後まで戦いたいと強く思いました」と完全な戦闘モードに入った。【柏原誠】