来季はくっきりと「160」を示す。ロッテ佐々木朗希投手(20)が1日までに、プロ2年目の今季を振り返った。5月16日に1軍で初登板し、同27日に初勝利。夏場から徐々にギアを上げ、11月にはCSで先発し159キロをマークした。底知れぬ能力を出し始めた要因に、ある2文字を挙げた。来季へ大きな期待を抱かせ、オフに入る。

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宿命か。大船渡高時代に163キロを投げた佐々木朗希には、球速の注目が必然と集まる。11月6日のCS楽天戦で今季最速の159キロを計測。もう、160キロを投げられる段階なのか-。試合直後に尋ねた。

「そこは分からないですけど、今日は裏では出てましたし、そこは求めるところじゃないので。特にこういう大事な試合では」

裏では-。その後の球団関係者への取材で、一部スピードガンで160キロが計測された球があったことが判明。高校時代は大半が岩手県内での登板で、観戦者は限られた。全国的にはいわば幻の剛腕だった朗希らしい、幻の1球だった。

シーズン全実戦での直球平均球速は、152・5キロだった。春先から「時間がたつにつれて球速は出てくるものと思うので、出たらイコールハッピーではないので」と言い、その後も「やることをやっていればもっと上がってくると思う」と道筋を描いた。

その通りになった。150~152キロだった中心球速帯が、秋は155~157キロに上昇。「春のシート打撃から比べたら10キロ上がってますし、平均的にも5キロくらい上がってて。後半戦は球速も出て、投球自体も楽になりました」。直球での空振りやファウルも明らかに増えた。

好投続きの要因は。楽天田中将と投げ合った9月10日の楽天戦後には、こう話している。

「全てにおいて慣れだけです。それだけです」

慣れ-。その後も何度か2文字を口にした。変化球、クイック、内角攻め、盗塁対策、フィールディング。投げるたびに見えた課題に「1回に多くのことはできないので」と1つずつ取り組み、より球質や打者に集中できる環境を整えた。「緊張して、自分が結果が出るか出ないか分からないから、相手のレベルが高いから、やっぱり緊張も大きくなってくる」と臨む中で生まれる好投。「やり切った時はすごく、今までにないくらいうれしかったり」。場数を踏み、本来の能力を発揮し始めた。

速いだけでない。特筆すべきは制球力だ。9イニング換算の与四死球数は前半戦は3・76個。それがエキシビションマッチ以降は1・41個と大きく改善した。10月7日の楽天戦では、ストライク率77・3%という驚きの数値も。少年時代は「すごくコントロール悪かったです」と明かす。

「C、B、硬式ってボールが変わっていくじゃないですか。それにつれて球速とコントロールが同時に上がっていきました」

小さくて軟式C号を上手に扱えなかった小学生時代。高校で硬球のサイズがようやく合致したという。

長い手足、周囲より大きなサイズ。中学の終わりから、体に強く向き合った。自主練習中心の大船渡高。自身のみならずチームの練習も中心になって組んだ。「自分の中でもすごく好きな時間ですし、その方が自分の中では一番成長できると思っているので」。体幹トレとストレッチを中心に励んだ高校3年間と、昨年1年間。コツコツ続けた努力が実り始めている。

「もともと野球、うまくなかったので。積み重ねていけばちゃんと返ってくる。下手くそな時の経験が生きたので、そういう風にやりました」

理想の投手像の1つに「相手を圧倒できるように」と挙げる。同年代のオリックス宮城、ヤクルト奥川らが活躍しても「タイミングがあると思うので」と焦らず進んだ。来季の目標は登板数、投球回とも今季の倍に定める。極めて大事なオフへ。「何にも縛られずに練習できるので」。2カ月間のひとり旅で、もっと強くなる。【金子真仁】