ロッテ佐々木千隼投手(27)は涙を流した。10月27日、楽天生命パークでの楽天戦。同点の8回に投げ、決勝点を許した。そのまま敗れ、優勝が消えた。

「1年間、ケガなくできたのが今年が初めてだったので、その意味ではすごく充実したシーズンになりましたけど、やはり悔しい場面は、一番印象に残る場面だったので。どうにかして来年以降につなげていきたいというのは強く感じました」

ロングリリーフ役で開幕した。好投を続け、信頼を勝ち取り、5月下旬頃から勝ちパターンを任され、8回のマウンドが仕事場になった。「何とかチームの役に立ちたいなと臨んだシーズンだったので」。不慣れな場所ながら、緩急を生かして、ひょうひょうと相手をかわし続けた。

先発とは違った。「打たれた次の日も試合はあるので。次の日に切り替えないといけないんで」。マウンドに上がれば、後ろを振り返らず、26個のホールドを積み重ねた。

シーズンの最後に打たれても、信頼は消えない。CSファイナル3戦目。1点勝ち越した8回に登板し、ピンチを切り抜けた。9回に追いつかれ終戦したものの、佐々木千には来季につながる勝負だった。

1死後、1番福田に安打を許し、その後盗塁や申告敬遠もあり、2死一、二塁で4番杉本を迎えた。今季ロッテ投手陣が何度となくやられた天敵だ。

「走者一塁でけん制もすごい多く入れて、走られたらダメという場面で。リクエストでプレー中断もあって、そこから申告敬遠。なかなかけっこう難しいというか、すごく嫌なテンポだったので」

福田の代走佐野皓には4球、けん制球を入れた末に走られた。相手ペースの中で杉本に対した。直球、スライダー、直球でカウント2-1。そこから独特のどろんとしたスライダーを3球続け、空振り、ファウル、ファウル。自身の良さをどんどん投げ込んだ。

「あまり(サインに)首は振っていないです」

捕手佐藤都を信じた。7球目。スライダーだった。ワンバウンドを振らせ、空振り三振に。ポーカーフェースでベンチへ戻ったが、もちろん、たかぶっていた。

「すごいバッターですから。抑えられたのはすごくうれしいですし、最後を三振で終われたのはすごく良かったですね」

技と魂を詰め込んだ最後の1球を、来季につなげる。【金子真仁】