阪神矢野燿大監督(53)が、アピール不足の若虎たちにダメ出しを連発した。楽天との練習試合(金武)は3-3で引き分けたが、キャンプ中盤になっても主力を脅かす若手が現れない現状を「寂しい」と厳しく叱咤(しった)。17年ぶりのリーグ優勝には若手の突き上げが不可欠だけに、厳しい言葉で奮起を促した。

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劣勢の9回に島田が適時三塁打を放ち、3-3のドローに持ち込んだ。だが、矢野監督の口調は穏やかではなかった。「後からいくやつが寂しい。ガツガツというかね。高寺、遠藤という若手以外の、もうちょっと上がもっともっとアピールしてほしい。暖(小野寺)も島田も1本出たけどね」。1軍戦力と期待して宜野座に呼んでいる若虎たちへの物足りなさを嘆いた。

この日の楽天投手陣で1軍で実績があるのは松井裕だけ。対外4試合の相手も若手投手が中心だ。だが、紅白戦も含めた5試合で、島田は打率1割6分7厘、小野寺は2割5分、江越は2割、熊谷は1割8分2厘…。1番近本、4番を争う大山、佐藤輝らは内容も結果も安定している一方で、レギュラーと控えの実力格差が目立つ。昨年は佐藤輝や中野らがチームを活気づけたが、今年は主力を脅かす新戦力の台頭が乏しい。

矛先は投手陣にも向いた。先発転向の及川は7回からの3イニングを1安打無失点に抑えた。だが、指揮官は立ち上がりの7回に2四球と安打で満塁のピンチを招いたことを厳しく指摘。「この投球じゃ先発はしんどい。長いイニングを抑えるのはちょっと無理、1軍の打者が並んだ時にゼロで終わることはない」。相手打者が若手中心で0封の結果は出たが、内容は不合格。開幕ローテ争いに黄色信号がともった。6回に1イニングを2奪三振で無失点に抑えた岩貞にも厳しい評価だ。「相手が打ち損じたのか、3人で終わっているけど。今はそこまできているようには思えない」と、現状では勝利の方程式は任せられないとした。

投手陣では昨季、伊藤将がローテに定着して優勝争いに貢献する風を吹かせた。ただでさえ、絶対的守護神スアレスの穴は大きい。日本一での勇退を現実にするためには、現在の主力だけの力では勝ち切れない。もちろんダメ出しの連続は、期待の裏返しにほかならない。20日の中日戦(宜野座)にはドラフト2位の鈴木勇斗投手(21=創価大)、同3位の桐敷拓馬投手(22=新潟医療福祉大)も対外試合デビュー予定。矢野監督の活に、ナインが奮起する番だ。【石橋隆雄】

▽阪神島田(9回に右翼線へ同点の適時三塁打)「ほかの外野手が打っていたので、負けたくない気持ちがすごく出ました」

▽阪神及川(4番手で3回1安打無失点も)「(7回の)立ち上がりで、自分で自分をメンタル的に追い込んでしまいました」

▽阪神岩貞(6回の1イニングをピシャリ)「昨年スライダーの被打率が非常に高かった。先日ガンケルに教わったスライダーがはまった。真っすぐの軌道で曲がっていく。僕の(これまでの)スライダーは1回(軌道が)膨らんでしまうので、そこを消したかった」

▽阪神熊谷(17日のデスノックでスタメンを勝ち取り1安打)「(二塁の守りでの)ファーストプレーでエラーをしてしまった。そういうところをしっかりしていきたい」

▽阪神江越(途中出場で8回に中前安打)「まだまだ課題も多いので、満足せずにもっともっとアピールしていきたい」

 

◆阪神、練習試合VTR

▼2月8日日本ハム戦(2-6、宜野座) 先発の及川はじめ若手5投手が登板したが、4人が失点。打線も6安打中5安打が近本や糸井らで、若手は高寺の1安打だけ。22年初陣を飾れず、若手が躍動した新庄軍団とは対照的だった。

▼同11日日本ハム戦(3-3、名護) 得点は坂本の2ランと梅野の適時打だけ。大山と江越が2安打したが、若手は小野寺と島田の1安打づつ。投げては藤浪が3回0封し、育成左腕の渡辺も1回0封。だが、勝利の方程式が期待される小野や馬場が失点した。

▼同12日楽天戦(3-0、宜野座) 伊藤将、村上、浜地、石井、湯浅の若手5人の完封リレーで22年初勝利を挙げた。野手は佐藤輝が3安打し、大山と木浪が適時打を含む2安打。近本も二塁打を放って計11安打したが若手は熊谷、小野寺の各1安打に終わった。