ここから追いつき、追い越す。楽天の2年目左腕、藤井聖投手(25)が28日、プロ初登板初勝利を決めた。ロッテ打線を相手に6回を4安打、無四死球で無失点と堂々たる73球。自身を含めて6人プロ入りした東洋大時代の同級生が次々に活躍する中、1年目に1軍マウンドにも立てなかった悔しさをぶつけた。チームはこの3連戦を2勝1分け。負けなしで首位を守った。

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25歳6カ月で初めて立った1軍のマウンド。念願の白星を手にした藤井は石井GM兼監督から祝福されると、こみあげてくる感情をぐっと飲み込んだ。「ものすごく緊張した。去年1軍に上がっても投げられなくて、悔しい思いをしてここまで頑張ってこられた。素直にうれしいです」。笑顔で写真に納まった。

ストライクゾーンで勝負した。「逃げない」と四球も死球もゼロ。5回1死から2連打された時も、続く松川を3球三振に仕留め、高部は直球で押し込んだ。「失点するなんて普通のこと。気負わずやればいい」とは、則本や松井裕からもらった助言だ。1点取られたってしようがない。そう思って打者に向かうと、抑えることができた。

出遅れた。そんな思いがあった。東洋大ではDeNA上茶谷、ソフトバンク甲斐野、中日梅津、オリックス中川圭、広島末包が同期だった。「先に大卒でプロにいった4人(上茶谷、甲斐野、梅津、中川圭)が1年目から華やかなデビューを飾った。社会人時代からすごく刺激を受けてきました」。よし、自分も。昨年9月14日、待望の1軍初昇格。だが優勝争いを続けるチームで登板機会が巡ってこず、同27日、登録を抹消された。

2軍で投球フォームを見直した。腕の位置を下げたことで制球が改善された。やっとつかんだチャンス。ものにした。「まだ1勝しかしてないので、肩を並べると言ったらおこがましいですけど、やっと同じ舞台に立てたのかな」。石井GM兼監督は、次も登板機会を与えることを示唆した。

ウイニングボールは、退院したばかりの静岡の祖父母に贈りたい。母方の祖父、立身(たつみ)さんは野球を教えてくれた恩人だ。「おじいちゃんが野球好きで、自分に野球を好きにならせてくれた。一番影響があった人」。遠くないうちに、「できれば手渡しで」吉報とともに届けに行く。【鎌田良美】

 

▼楽天藤井がプロ初登板で初勝利。東洋大-ENEOSを経由した入団2年目で、25歳6カ月での初勝利となった。楽天の初登板勝利(外国人選手を除く)は09年井坂亮平、10年菊池保則、11年塩見貴洋、14年横山貴明、浜矢広大、15年安楽智大、21年早川隆久に次いで8人目になるが、年齢では井坂の24歳6カ月を抜いて藤井が最年長になる。

◆藤井聖(ふじい・まさる)1996年(平8)10月3日、神奈川・海老名市生まれ。富士市立では3年夏の藤枝東戦で無安打無得点を達成。東洋大では4年間で通算10試合0勝1敗、防御率2・45。19年にENEOSへ進み、同年社会人日本代表に選出。20年ドラフト3位で楽天入り。昨季は2軍で17試合4勝3敗、防御率3・56。176センチ、80キロ。左投げ左打ち。今季推定年俸1000万円。

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