広島のルーキー中村健人外野手(24)がプロ1号を放った。0-2の5回無死一塁からヤクルト先発の左腕石川の外角球を逆方向へはじき返した。右翼席最前列に飛び込む同点2ラン。45打席目での1発にはじけるような笑顔が太陽に照らされた。チームは延長12回の末、引き分けた。首位攻防戦の舞台で、長打が打てる即戦力ルーキーが潜在能力の高さを見せつけた。

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中村健が右打席から放った放物線は右翼席最前列に吸い込まれた。2点を追う5回無死一塁。フルカウントから先発石川の6球目を仕留め、プロ1号となる2ラン。「マツダで打てたことがこんなに幸せなんだなとかみしめながらベースランニングできた」。3万超の観衆からの拍手を浴び、ダイヤモンドを1周した。

5月に入りスタメンの機会も増えたが、3、4月の先発出場は1試合だけだった。それでも前向きに、ルーキーはベンチで声を出し続けた。「試合ができるのは誰かがそういった役割(ベンチワーク)をやってくれてるおかげですから」。グラウンドに立てなくても、自らができることに全力で取り組み、チャンスを待った。

昔からそうだった。中村健が中学時代に所属した愛知知多ボーイズの当時の監督、斎藤範彰(のりあき)氏(68)は証言する。「彼は試合に出ないときでもバット引きをしたり、そういう裏方業を率先してやっていましたよ。なかなか中学生にできることではないと思うんですけどね。『いつもやってくれてるから』と感謝(の気持ち)を持てる子でした」。日の目を浴びても、浴びなくても、中村健はチーム第一に行動する。

プロ1号は首位攻防戦の大舞台で、一時は同点となる貴重な一撃だった。佐々岡監督は「逆方向への1発。初ホームランだし、自信にしてほしい」とメモリアルを祝福。チームは延長12回の熱戦の末に引き分けた。勝利につながる一打にならなかったが、中村健は「あれ(本塁打)もあっての引き分け。勝利に近づくために確率を上げられることをするだけだと思う。そこに尽きる」と振り返った。打席内外を問わず、勝利に貢献するだけだ。【前山慎治】

◆中村健人(なかむら・けんと)1997年(平9)5月21日生まれ、愛知県出身。中京大中京高では3年夏に甲子園出場。慶大-トヨタ自動車を経て21年ドラフト3位で広島入り。契約金5000万円、年俸1100万円(いずれも推定)。広角に打ち分ける技術と長打力を併せ持つ。183センチ、90キロ。右投げ右打ち。

○…先発アンダーソンは5回2/3を5失点で勝ち負けはつかなかった。初回2死一塁から村上に右中間へ先制2ラン。逆転した直後の6回には1死満塁から左前適時打を浴びるなど、3失点。「体調も良く、しっかり準備して臨めた。スライダーの感覚も良かったと思うし、真っすぐも普通に投げられた」。前回5日の来日初登板では7回無失点で初勝利を挙げたが、2戦2勝とはいかなかった。

○…松山が代打で大きな仕事を果たした。3-5の6回2死一、三塁で打席へ。石山の2球目を芯でとらえ、一塁手の股を抜く、右翼線への2点適時二塁打。「結果どうこうより小さくならず、強く振っていこうと思って打ちにいった。同点に追いつくことができて良かった」。同点タイムリーに二塁ベース上で両拳を上げ、喜びを表現した。

○…ターリーが前日に被弾した村上から空振り三振を奪い、リベンジに成功した。延長12回無死一塁で村上と対戦。カウント3-2から直球でバットの空を切らせた。「真っすぐを昨日は打たれて、悔しい気持ちを持ちながら、今日、真っすぐで空振り三振を取れて良かった」。被弾と同じ直球を勝負球に選択し、結果を残した。延長12回の1イニングを2奪三振無失点で抑え、チームの敗戦を消した。

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