涙の真相は-。日本ハム清宮幸太郎内野手(23)が、自己最多タイの1発で勝利を彩った。「日本生命セ・パ交流戦」のDeNA戦で3点リードした4回、右越え7号ソロを放った。プロ5年目でのキャリア最多に並ぶアーチで、勝利を大きく引き寄せた。ノーヒットノーランを食らった前夜の同戦では、ベンチで涙を拭うような姿が話題になったが、この日は一蹴。笑顔でチームの連敗を「5」で止めた。

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ほおを紅潮させて、価値あるアーチを描いた。4回の先頭。清宮が「自分でもビックリ」と振り返る1発を放った。2球で追い込まれながら、ボールを一つ挟んで4球目。沈みきらなかった141キロのフォークを捉え、右翼席中段に運んだ。「打った瞬間だったので、気持ち良かったです」。リードを4点に広げ、勝利を彩る会心の当たりだった。

壁を越える日が、迫ってきた。5月28日巨人戦以来、9試合ぶりの1発。5年目でキャリア最多7本塁打に並んだ。「とっとと、超えたいです」。1年目の18年から3年連続で7本塁打がシーズン最多にとどまってきた分、はやる気持ちは高まっている。

快音で“疑惑”を拭い去った。ノーヒットノーランされた前夜の同戦では、試合後にぼうぜんとする姿が、涙を流しているように見られた。試合後の帰り際、新庄監督とすれ違い「泣いてないよね? 記者に聞かれて」と声を掛けられ「何のことか分からないです」と全否定したという。「(涙の)“な”の字も出ていないです」。この日の試合前には、自身の表情を注視する報道陣に向かって「泣いてないですよ!」と笑顔で一蹴する姿もあった。

「悔し涙」と聞き、鮮明に覚えているのはプロ3年目の20年9月20日、札幌ドームで行われたロッテ戦。チーム全体でミスが続き、暗雲漂っていた。9回2死までリードしていたが、一塁を守っていた自らの捕球ミス(記録は捕手清水の失策)で同点とされた。「もう…大変だったときはありました」。心をへし折られながら必死に前を向き、この日を迎えた。

屈辱の歴史的敗戦から一夜明け、チームは15イニングぶりの得点を挙げるなどリードを守り切り、連敗を「5」で止めた。「とりあえず、泣いてないです!」と繰り返した清宮。満面の笑みで、勝利の余韻に浸った。【田中彩友美】

○…日本ハム松本剛が勝負強さをみせ、6試合ぶりの勝利を引き寄せた。1-0の3回1死一、二塁では中越えの2点適時二塁打。2点差に詰め寄られた直後の5回無死一、三塁では中犠飛を放ち、貴重な5点目を挙げた。3打点に「(5回は)前の2人、(浅間)大基とメンディー(アルカンタラ)がいい形でつないでくれたので、勢いに乗れた」とチームメートに感謝した。

○…日本ハム上原が18年以来4年ぶりの2勝目を挙げた。初回にいきなり連打を浴びて無死二、三塁のピンチを招くも、後続を断ち無失点。4点リードの5回に2失点したが「ひっくり返されなかったことが大きかった。失点する中でもアウトが取れる内容の投球、リズムが悪くない投球が大事と思っていた」と振り返った。本拠地札幌ドームでの勝利も4年ぶりとなった。

○…日本ハム新人の北山が6セーブ目を挙げ、球団の新人最多記録を29年ぶりに塗り替えた。2点リードの9回にマウンドへ。最後は右翼を守る万波のスーパーキャッチにも助けられ、3者凡退で試合を締めた。愛称は「北山教授」。今はドイツの哲学者が著した「弓道と禅」を読書中で「ピッチングにも還元できる」。球団史に名を刻み「すごく光栄」と、ほほ笑んだ。

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