沖縄キャンプ巡りでローカル路線バス乗り継ぎの旅はいかが-。全国で唯一、モノレール以外の鉄道がない沖縄県での移動といえば、レンタカーやタクシーなどのイメージが強い。スケジュールも組みやすく、時間のロスも少ない。だが沖縄のレンタカー不足が叫ばれているという。コロナ禍で観光が停滞した時に、レンタカー会社が保有する車を売却したことが一因だ。

そんな中で「沖縄の路線バス おでかけガイドブック」(論創社、税別1600円)が昨年12月に発刊された。「沖縄でのバス移動って、意外と便利ですよ」と話すのは著者の室井昌也氏。日本で唯一の韓国プロ野球専門のジャーナリストとしても知られる。

なぜ、バスの本を? 「免許は持っているのですが、あまり運転が得意ではなくて…」。05年から沖縄でキャンプ取材を続け、知人に運転を頼むこともあったが、バス移動に替えた。すると観光客が前乗り、前降りという珍しい乗車スタイルに戸惑い、地元民でも行き先を聞く人が多い不慣れな姿を見た。「ひと目で分かる乗客目線のガイドブックがあったら」。そう思い立って、複数のバス会社の路線図を1冊にまとめた。

例えば那覇で巨人の練習から1日を始める。若手の息吹を感じ、午前11時すぎに球場を離れ、公園前のバス停から琉球バス交通の「98系統」に乗り、約30分かけて浅野浦で下車。ヤクルトの浦添キャンプに足を運び、3冠王・村神様の打撃を拝む。午後2時すぎには再び移動を開始し「88系統」で約40分でコンベンションセンター前に到着。3球団目としてDeNAの居残り練習でキャンプ漬けの1日を締めくくる。ハシゴも十分に可能だ。

室井氏はキャンプ取材だけでなく、ラジオ出演のために毎週のように沖縄に通い、そしてバスに乗る。「私自身は車中で原稿を書いたり、韓国プロ野球の情報を集めたり、有意義に過ごしています。ファンの方は景色を楽しんだり、泡盛の酒蔵など、お酒を楽しめる施設も多いので、運転を気にして我慢する必要もなくなります。レンタカーも有効な移動手段です。その中でバスも選択肢の1つになってくれれば」。プロ野球のキャンプ天国といわれる沖縄。バスの旅で車窓からの景色が変わるかもしれない。【広重竜太郎】