悩める逸材の打棒がさえた。6月下旬に今季初昇格した楽天黒川史陽内野手(23)が、昨年4月9日ロッテ戦以来454日ぶりの1発を放った。ソフトバンク戦に「8番二塁」で出場。5回に1号2ラン、6回にも適時打で2安打3打点とし、圧倒的な強さを見せる首位相手の2連勝、さらに5月3日以来の3位浮上に貢献した。同学年のドラフト1位古謝が先発し、同6位中島がプロ初スタメンを飾った一戦。2軍暮らしが長かった高卒5年目が「先輩」の貫禄を示した。
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お世話になった“あの人”の前で、笑顔の黒川がダイヤモンドを1周した。1-0の5回1死二塁、ソフトバンク大津の初球直球を強振。右中間ホームランテラス席に1号2ランを運んだ。福岡はオフに自主トレを行う特別な場所。「本当にストイックな方で、野球に対する姿勢を見習って、いろいろ吸収したい」とソフトバンク中村晃に2年連続で師事した。「いろいろ教えてもらったんで、(目の前で打てて)良かったと思います」とうなずいた。
昨季の1軍出場はわずか9試合。ソフトバンク戦には1度も同行できなかった。だからこそ、中村晃からは「来年は頑張れよ」と激励されたという。「ペイペイで活躍できるようにします」と誓い、見事に敵地で有言実行を果たした。
智弁和歌山で1年夏から甲子園に5季連続出場した野球エリートで、19年ドラフト2位で楽天に入団。だが、2軍暮らしが長く、1軍では過去4シーズンで目立った成績が残せていない。古謝、中島ら大卒ルーキーとは同学年で「負けたくないっていう気持ちはあります」。この日は2安打3打点。「同級生が頑張っているので、その中で打つことができて良かったです」。同じ01年生まれの先発古謝を援護し、プロの先輩として意地を見せた。
6月26日の初昇格後は全7試合でスタメン出場している。「監督にいいアピールができるようにというか、そういう気持ちでやってます」。今江監督も黒川の1発を手放しで喜んだ。2軍打撃コーチ時代から期待を寄せ、監督就任後もブレーク候補として背番号24の名前をたびたび挙げてきた。ベンチでは笑顔で出迎えたものの、内心は「ちょっと今日のホームランで泣きそうになりましたね」と、ぐっとくるものがあった。
楽天の近未来を担う23歳。今年こそ、覚醒する。【山田愛斗】
◆黒川史陽(くろかわ・ふみや)2001年(平13)4月17日、奈良県生まれ。智弁和歌山では1年春からベンチ入り。18年センバツで準優勝するなど、5季連続で甲子園出場。19年ドラフト2位で楽天入団。20年9月4日オリックス戦でプロ初出場。21年6月4日広島戦で初本塁打。今季推定年俸780万円。182センチ、86キロ。右投げ左打ち。



