<中日4-2巨人>◇4日◇ナゴヤドーム

 山口が負けた。首位独走を支えてきたリリーフ左腕の不敗神話が83試合で終わった。巨人山口鉄也投手(25)が、昨年6月1日のソフトバンク戦以来84試合ぶりの黒星を喫した。1点リードの7回、1死二塁で2番手として登板したが、2四球と2安打で2失点し逆転を許し、自身の連勝記録は14でストップした。

 いつもの山口ではなかった。一打同点のピンチで代打の切り札、立浪との勝負。普通の投手なら動揺してもおかしくないが、これまで何度も修羅場をくぐり抜けてきた左腕なら平常心を保てる場面のはずだった。しかし、この日は最初から様子が変だった。直球、変化球ともキレがなく、捕手の阿部から「腕を振れ!」とジェスチャーで励まされても、ストライクは思い通りに入らなかった。

 結局、本来の腕の振りは最後まで見せられないまま。フルカウントまで粘られた立浪を四球で歩かせると、続く井端にも四球を与え、今季初めてとなる2者連続四球で1死満塁へとピンチを広げた。そして、荒木にはスライダーを、森野には直球を左前に運ばれ逆転を許した。打者4人に対し1死も取れないままマウンドを降り「立浪さんは左打者なので抑えなきゃいけなかった。5連投の疲れ?

 関係ないです」と、肩を落とした。

 連勝記録には関心がなかった。10年前に先発で15連勝した上原(現オリオールズ)とは役割が違う。山口はこれまで「連勝記録なんかどうでもいい。自分の仕事は、先発投手に白星をつけること」と繰り返し、自身の不敗神話が騒がれることに戸惑いを隠さなかった。この日は、先発グライシンガーの力投をフイにしてしまったことを何より悔しがった。

 試合後、山口の乱調を責める者は1人もいなかった。原監督も「彼が連投している時は、チーム状態がいいということ」と変わらぬ信頼を口にした。昨年6月1日に敗戦投手となった後は83試合に登板して黒星ゼロ。常に勝ち負けのかかる場面で投げてきたことを考えれば、驚くべき数字といっていい。両リーグ最多の41試合に登板している今季も、前回まで防御率は0点台だった。398日ぶりの黒星が、山口の怪物ぶりをあらためて浮き彫りにした。【広瀬雷太】

 [2009年7月5日9時4分

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