<阪神2-1西武>◇6日◇甲子園

 サヨ~ナ~ラ、サヨナ~ラ、好きになった虎~。岡山・倉敷で演じた劇的勝利を甲子園で豪快おかわりだ。好投のサブマリン牧田を最後の最後、9回に沈めたのは阪神4番マット・マートン外野手(31)。折れたバットを交換し、幸運の相棒で左翼スタンドに虹を架けた。猛虎通算100本目のサヨナラアーチで、5年ぶりの2戦連続歓喜。首位巨人もしぶといけど、サヨナラせずに追いかけよう。

 マートンはバットの根っこ付近を見つめ、顔に?マークを浮かべた。同点の9回裏無死、初球スライダーを空振りした後だ。「前の打席(遊ゴロ)で詰まった時に割れていたみたい」。審判に願い出て一塁ベンチに小走り。慌てて滑り止めの松ヤニを塗った新しい相棒は、幸運のバットとなった。

 直後の2球目、真ん中117キロスライダー。歯をくいしばり強振した。左翼フェンスを楽々オーバー。2戦連続のサヨナラ劇となる1発だ。自身、今季2度目のサヨナラ打。「ラッキーバット!

 もしかしたら上から(神様が)見てくれていたのかな」。三塁を回ると、ヘルメットを放り投げた。仲間の輪に消えた後、全員が決めポーズ。誰もがくしゃくしゃの笑顔だ。

 「牧田はなかなかいないタイプ。何度対戦していても難しい投手。スピードだけ見ると速くないけど、そう思っていると遅れてしまう。他の速球投手のように、アグレッシブにセンター返しを考えたよ」

 予習した資料には外角中心の配球が記録されていた。今回も外で引っかけさすのかと思いきや「内に突っ込んできた」。思い切ってデータを頭から消した。シンプルに来た球のミートを心がけ、5年ぶりの2戦連続サヨナラ勝利に導いた。

 ソフトドリンクまでの道のりは遠い。普段の飲み物は基本的に水だけ。りんごジュースはもちろん、炭酸飲料には一切目を向けない。甘い飲み物を楽しみたい気持ちもあるが、アスリートとして自らを律し続ける。ストイックな男だ。

 「もともと両親からもそういう教えを受けていたんだ。きちんと脱水症状を防ぐためにもね。炭酸飲料を1杯飲めば、その分同じ量の水を飲まないといけないと学んだ。あと、カロリーのことも考えているよ」

 2月のキャンプ前には過去最軽量の体重100キロ前後で来日。必要以上に太らないよう、過度の糖分摂取で水分補給を妨げないように気を使う。「だからソフトドリンクは休日に自分へのご褒美で飲むぐらいだね。ポテトチップスもつけたりね」。まるで小さな子供のようにつましい生活が、快音連発の土台にある。

 「昨日は良太と西岡が打ってくれた。毎日違うヒーローが出るのは、いいチームの証拠だよ」

 2戦連続サヨナラ勝利で首位巨人とのゲーム差0・5をキープ。3戦連続サヨナラ勝利に向け、お立ち台では日本語で「イイデスネ!

 モウイッチョ、オネガイシマス!」と叫んだが、本音は冷静だ。「必ずしも思うような結果がついてくるわけじゃない。今まで通りのプレーを続けていきたい」。どこまでも頼もしい。【佐井陽介】

 ▼マートンが来日初のサヨナラ本塁打を放ち、阪神は前日に続きサヨナラ勝ち。阪神の2戦連続サヨナラ勝ちは、08年9月9~11日に3戦連続で記録して以来5年ぶり。交流戦では初。阪神の外国人選手がサヨナラ本塁打を打ったのは06年5月20日シーツ以来で15本目。これで阪神のサヨナラ本塁打は通算100本目。チーム1号は48年4月12日梶岡で、サヨナラ本塁打が100本に到達したのは7球団目。