プロ野球というレールに乗った即戦力左腕が、出発のときを迎えた。広島のドラフト6位飯田哲矢投手(23=JR東日本)が10日、広島入りした。広島の新人8選手で唯一の社会人出身者。駅員を経験したこともある“鉄道左腕”は今日11日、プロ野球選手としての第1歩である新入団選手発表会見に臨む。

 出発進行-。プロ野球選手として列車「飯田号」が動きだす。長い道のりを駆け抜け、JR東日本で駅員経験もある左腕が、いよいよ節目の1日を迎える。

 藤沢翔陵高では甲子園とは無縁。亜大でも目立った成績を残せなかった。転機はJR東日本に入社。営業部に所属しながら、昨年末は1週間駅員として池袋駅のホームに立った。場内アナウンスや運転席に同乗した経験もある。「自分で働いて稼いできた経験があるので、お金の大事さ、働くことの大変さを知っている」。社会の厳しさが、飯田をたくましくした。

 精神的な成長に比例するように、本業の野球でも頭角を現し始めた。大学時代までは球速が140キロに届かず、同郷のレジェンドである中日山本昌の著「133キロの怪速球」を参考にしたこともあった。だが、今では最速145キロの快速球が武器。さらに今年11月には鈍行?

 のチェンジアップを習得。試投からわずか3日後の日本選手権、JR九州戦で5個の三振をチェンジアップで奪った(計8三振)。投球の幅を広げる球を手に入れ、右打者への苦手意識も払拭(ふっしょく)。「積極的な坂本選手(巨人)と対戦したい」。球界を代表するスラッガーに挑戦状をたたきつける。

 プロ入りの切符はつかんだ。今日11日に入団会見の始発駅に立つ。今後は優勝という駅を、いくつも経由するため、左腕を振っていく。【前原淳】

 ◆飯田哲矢(いいだ・てつや)1991年(平3)3月28日、神奈川・藤沢市生まれ。藤沢翔陵-亜大を経てJR東日本。最速145キロの直球とチェンジアップなどの変化球で緩急をつけた投球が持ち味。中継ぎの即戦力として期待される。182センチ、80キロ。左投げ左打ち。