ボクシングのWBC世界フライ級王者内藤大助(35=宮田)が、「鉄のハート」で同級3位亀田興毅(23=亀田)の挑戦を退ける。29日の世界戦(さいたまスーパーアリーナ)の予備検診が24日、都内で行われ、両者とも異常なしと診断された。約30分差で行われ、顔合わせはなし。6度目の防衛戦の内藤は、1分間の脈拍数が過去最少の「44」と、走り込みによるスタミナ強化が数値に表れた。

 内藤が王者の風格を漂わせた。予備検診中は、壁越しに明るい笑い声が漏れた。予備検診では異例の約80人の報道陣を前にしても「状態がいいですね、うん。順調だし、すごくいい」と、堂々の絶好調宣言。風邪の予防のためにマスクを着用し、口元は隠れていたが、目尻は下がっていた。

 ハートの強さは脈拍数にも表れた。一般的に脈拍数が少ないほどスタミナがあると言われるが、この日の「44」はこれまでの防衛戦前では最も低い。内藤は「とにかく走る。その成果が出てきているのかなと思う」と分析した。マラソンの名伯楽、小出義雄氏の教え子の野木トレーナーの指導を受け、3度の走り込み合宿を敢行。さらに横浜市内で88段と303段の階段のダッシュを週2回、2週間前まで行った。「年齢の変化とともに体への刺激が持続する期間も短くなる。試合日にピークに持っていくため」(野木氏)に、今回初めて、減量で苦しい試合9日前の20日に88段を10本追加した。やれることをすべてやって「本当に調子いいね」と自信を深めた。

 ちょうど1週間前、世界戦前の心境を色紙に「35才内藤

 現状に満足せず!」としたためた。いじめられっ子からの脱皮を目指して強さを求めたが、「食のこと、体のこと…。ボクシングはすごいって思った。強さだけを求めてたけど違うね、今は。ボクシングは面白い」としみじみ話した。亀田家との因縁にけりをつけるべく万全に仕上げても、「僕は満足しない。毎回『まだまだ』って思っている。当日に風邪をひいたりけがをしたら意味がない」と鋭い視線を向けた。

 予備検診は30分の時間差で行われ、興毅との対面はなかったが「自分のことで精いっぱい」と、無関心を装った。「プレッシャーはあるよ。けど、それで負けちゃうようじゃダメ。はね返します。プロだからね」。興毅を倒して6度目の防衛を果たす、その瞬間まで「鉄のハート」には、ひびすら入りそうにない。【浜本卓也】