全7試合。28日(日本時間29日)、米ニューヨーク州にあるナッソー・ベテランズ・メモリアル・コロシアムで、WWE初の試みとなった女子レスラーのみのPPV大会エボリューションが開催された。「海賊姫」と呼ばれるWWE傘下のNXT女子王者カイリ・セイン、「天空の逸女」の愛称を持つ紫雷イオ、そして15年10月のデビューから267試合のWWE連勝記録を誇った「明日の女帝」と呼ばれるアスカが、うち3試合に出場した。

WWEで「海賊姫」として人気上昇中の前NXT女子王者カイリ・セイン(C)2018WWE,Inc.AllRightsReserved
WWEで「海賊姫」として人気上昇中の前NXT女子王者カイリ・セイン(C)2018WWE,Inc.AllRightsReserved

セインのNXT王座戦はセミファイナル前に組み込まれた。挑戦者は前王者シェイナ・ベイズラー。会場で観戦していたはずのベイズラーの盟友2人(マリナ・シェファーとジェサミン・デューク)による想定外の試合介入を受けて敗れてしまったが、場外へのダイビングボディープレスなどで会場の視線をくぎ付けにした。ベイズラーたちは現ロウ女子王者ロンダ・ラウジーと4人で「MMA(総合格闘技)フォー・ホースウィメン」と呼ばれており、セインも彼女らとの因縁もできた。

メイ・ヤング・クラシック準優勝の紫雷イオ(C)2018WWE,Inc.AllRightsReserved
メイ・ヤング・クラシック準優勝の紫雷イオ(C)2018WWE,Inc.AllRightsReserved

世界12カ国から計32選手が出場したトーナメント、メイ・ヤング・クラシック決勝には、紫雷が勝ちあがってきた。日本マットで対決してきたトニー・ストームとの顔合わせ。お互いの得意技をいかんなく繰り出し、紫雷が狙った2発目の月面水爆を両ヒザで迎撃されると、ストームの2発目のストロングゼロで3カウントを許す、という好勝負だった。計20選手出場の女子王座挑戦権争奪バトルロイヤル戦にはアスカが見せ場を作り、最後の4人に残ったところでリング外に排除されて敗退となった。

WWEで300戦近く無敗を誇ったアスカはもっとも女子王座に近い存在(C)2018WWE,Inc.AllRightsReserved
WWEで300戦近く無敗を誇ったアスカはもっとも女子王座に近い存在(C)2018WWE,Inc.AllRightsReserved

日本勢はいずれも勝利には届かなかったが、WWE殿堂入りの選手も加えた新旧50人を超えるメンバーが出場した中でインパクト、そして爪痕を残せた印象だ。世界中に動画配信されており、存在感は示したはずだ。以前からWWEでは女子タッグ王座の新設が計画されており、今回の大会成功も後押しに女子王座が増える可能性が高い。さらに3選手がタイトルに絡むチャンスが増えることになりそうだ。

過去、WWEではケンゾー(現KENSO)の妻で日本人初のディーバとなったヒロコ(鈴木浩子=現船橋市議)がマットに上がっていたが、主にケンゾーをサポートする役目。タイトルといえばWWE前身のWWF時代には94年にブル中野が初めてWWF女子王座を獲得。さかのぼること88年には「JBエンジェルス」山崎五紀、立野記代組がWWFタッグ王座を奪取した2例ほどだ。

シングル王座か、近い将来に新設されるであろうタッグ王座か。ロウ、スマックダウンの舞台で、日本女子勢が四半世紀以上の時を越え、WWEベルトを掲げる姿が見られるかもしれない。トップ級が集結する米マットで戦う「やまとなでしこ」たちの進化(エボリューション)は止まることはない。【藤中栄二】