3階級制覇王者ホルヘ・リナレス(32=帝拳)が挑戦者ワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)に10回2分8秒TKOで惜敗し、4度目の防衛に失敗した。6回にダウン先取も、10回にボディーで倒された。08年北京、12年ロンドン五輪王者のロマチェンコは史上最速12戦目での3階級制覇を達成。戦績はリナレスが48戦44勝(27KO)4敗、ロマチェンコは12戦11勝(9KO)1敗となった。

 下馬評の劣勢を払拭(ふっしょく)するリナレスの一撃だった。「相手が見えてチャンスがあった」という6回、より攻勢に出たロマチェンコの一瞬の油断を見逃さない。至近距離から最少予備動作で放ったカウンターの右ストレートが顎をとらえた。はじかれるように尻もちをついた現代最高傑作と呼ばれる男の姿に、ボクシングの「聖地」に詰め掛けたファンは沸騰。ロマチェンコもプロ初ダウンに「強烈な右だった」と目を見張った。

 両者ともに光速と称されるほどのスピードが持ち味。序盤から予想を裏切らないハイレベルで俊敏な交錯が続いた。「最初からやりにくかった。ロマチェンコはバランスが良く、スピードがあった」と認めたが、連打には連打で返し、左ボディーも有効だった。最後は互いに勝負どころと踏んで攻めを強めた10回に決定打を被弾。左ボディーでひざをつき、「どんどん面白くなった。あとちょっとだったけど、ボディーは驚きだった」と戦い終えた。

 17歳でベネズエラから単身来日。王座陥落、引退もよぎる中、15年目でメガファイトにたどり着いた。予想を上回る熱戦を見せ、記者会見では早くも再戦への質問も飛んだ。「両者とも力を出し切った」と自信に満ちた表情でグッドルーザーとなった。