ボクシングの興行再開後、国内最初のタイトルマッチが16日、東京・後楽園ホールで行われた。東洋太平洋フェザー級王者清水聡(34=大橋)は、同級14位殿本恭平(24=勝輝)と対戦。初回に2度のダウンを奪うと、7回2分10秒、連打を集めたところでレフェリーがストップし、5度目の防衛に成功した。日本スーパーライト級王者井上浩樹(28=大橋)は同級1位永田大士(30=三迫)に7回2分17秒TKO負けし、2度目の防衛に失敗。16戦目でプロ初黒星を喫した。

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無観客の「聖地」に清水のパンチ音が響き渡った。1回に得意の左ストレートでダウンを奪うと、直後に右フックで2度目。その後は殿本の手数に苦しむも、「ジャブが当たると分かった」とリーチ差を生かし、ペースを奪い返した。勝負に出たのは7回。ボディーで後退させると、コーナーで一気の連打を浴びせ、試合を終わらせた。

19年7月のWBOアジアパシフィック・スーパーフェザー級王者ノイナイ戦で6回TKO負け。両眼計4カ所を骨折し、緊急手術を受ける悪夢のプロ初黒星を喫した。1年ぶりの再起戦を勝利で飾り「(コロナ禍で)対人練習が出来なかった影響も出たが、プロは勝つか負けるか。勝ててよかった」と安堵(あんど)の表情を浮かべた。

ジムが使えない自粛期間中には、1カ月で300キロのロードワークで下半身を強化し、外食中心だった食生活も自炊に切り替えた。減量や計量後の食事などの調整は、同門の3階級王者八重樫に教え受け、切れ味鋭いパンチを取り戻した。

次戦について大橋会長は、アジアパシフィック同級王者の20歳、森武蔵(薬師寺)との対戦を示唆。清水も「最終的には世界」と力を込めた。ボクシングの“再出発”の日に、8年前の銅メダリストが存在をアピールした。【奥山将志】