前4団体統一バンタム級王者でWBC、WBO世界スーパーバンタム級1位の井上尚弥(30=大橋)が同級初戦で、世界ベルト2本を獲得した。同統一王者スティーブン・フルトン(29=米国)に挑み、8回1分14秒、TKO勝利。8回、無敗の同級最強王者から、右強打からの左フックでダウンを奪い、その後もラッシュで攻めてレフェリーストップ勝ち。世界戦20連勝で、国内2人目の世界4階級制覇を達成した。世界初の2階級での4団体王座統一へ、WBAスーパー、IBF世界同級王者マーロン・タパレス(31=フィリピン)との対戦を熱望した。
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鋭い一撃が、動きの鈍った統一王者に入った。8回、井上が右強打でフルトンの顔面を打ち抜き、返しの左フックでダメ押し。ダウンを奪うと、立ち上がった無敗王者に容赦はなかった。ラッシュで浴びせ、レフェリーストップでTKO撃破。18年5月以来、約5年2カ月ぶりとなった挑戦者の青コーナートップによじのぼり、超満員のファンに勝利を報告した。
スーパーバンタム級初戦で最強とされる統一王者を沈め「(同級で)すごくスピード、パワーが乗った。階級の壁は感じなかった。フルトンは同級でもそこそこ大柄。やれることを証明できたと思う」と自信に満ちた表情で言った。体格では身長で4・5センチ、リーチで8センチ劣勢も関係なし。ロープ、コーナーに追い詰め、得意な距離で拳を打ち抜き、ダメージを与えた。
ラウンド間のインターバル1分間で最大限の体力回復を可能にする肉体が完成した。自衛隊体育学校で導入される「耐乳酸トレ」を5月下旬から最終調整ギリギリまで消化。乳酸による筋肉の疲労に耐える肉体作りのため、ひたすらサンドバッグを連打するメニューで、ロングスパーリング後も必ず取り組み、スタミナには相当の自信を持っていた。中盤から動きの鈍りはじめたフルトンに対し「相手のペースが落ちてきてプレスをかけようとした時、練習を重ねていた当たるだろうと思ったパンチが当たった」。すべて、計算通りだった。
勝利後は、会場で視察したWBAスーパー、IBF王者タパレスをリングに呼び込んだ。「(フルトン撃破で)スーパーバンタム級最強といえるのではないかなと。僕が持っているベルトは2本。今年中に2本のベルトをかけて戦いましょう」と宣言し、握手を交わした。29日にWBO世界ウエルター級王者のテレンス・クロフォードも挑戦する世界初となる2階級での4団体統一。井上も年内の4団体王座統一へ道筋を自ら演出し、メインを締めくくった。【藤中栄二】
○…フルトン-井上戦を視察したWBAスーパー、IBF世界同級王者タパレスが井上との4団体王座統一戦に前向きな姿勢を示した。試合後、井上に呼ばれ、2本の世界ベルトを持ってリングイン。年内の4団体統一戦の実現に向け、対戦意思を問われるとタパレスは「自分自身が王者であることを証明したいので、戦いたい」とはっきりと明言した。
○…試合後の会見で、大橋ジムの大橋会長はすべてKO勝ちで世界4階級制覇を成し遂げた井上の実力をほめたたえた。ライトフライ級、スーパーフライ級、バンタム級、そしてスーパーバンタム級とすべて王者をKO撃破して王座獲得したと強調。「判定とKO勝ちは違う。王者フルトンをKOしたのはすごく大きい」と言葉に力を込めた。またタパレスとの4団体統一戦の実現へ「年内の4団体統一戦に向けて動き出したい」と交渉開始すると明かした。
○…無敗のフルトンが、負けた。5回以降、徐々に反撃を開始し、7回中盤には井上の顔面をクリーンヒットする場面もあったが、8回に力尽きた。「彼が勝つべきだったのかもしれない」と新チャンピオンに敬意を示した。それでも「彼は強かったですけど、サプライズという点では、なかった」と譲らない一面も見せた。

