断言はできないが、現時点で大栄翔は優勝候補筆頭だろう。足も出る、手も出るで全くすきがない。

2勝7敗の対戦成績がうそのように高安を圧倒した。足で押すのが押し相撲の理想だが、この5日間は申し分ない。同じ押し相撲でも貴景勝は突いて押して前に出てのリズムで取るタイプなのに対し、大栄翔はとにかく突っ張って猛進するタイプだ。1つリズムが狂うとかみ合わない今場所の貴景勝に対し、大栄翔は迷いがない。上背もそれほど高くなく懐も深そうにないから、力のある四つ相撲の力士に差されるのが難点だが、今の迷いのない相撲を取り続ければ鬼に金棒だろう。問題は残る役力士との対戦が関脇2人で、あとは番付同等か下位が相手。

ここまでのように、負けて元々という姿勢で臨めるかだ。気持ちが受け身になり、歯車が狂うと大崩れしかねない難しさが押し相撲にはある。(元大関朝潮・日刊スポーツ評論家)