現役最年長関取の東前頭3枚目玉鷲(片男波)が、37歳10カ月で昭和以降最年長優勝を果たした。本割で3敗で追う西前頭4枚目の高安(32=田子ノ浦)との直接対決を制し、13勝2敗。19年初場所以来2度目の賜杯を手にした。

平幕同士の大一番。玉鷲は落ち着いて高安のぶちかましを受けると、力強い左右の突き押しを連発。その勢いのまま押し出した。

また、1横綱3大関を全て破った玉鷲は2度目の殊勲賞に輝いた。37歳10カ月での受賞は鶴ケ嶺を抜いて5番目の高年齢で、初優勝した19年初場所以来の獲得となった。

この最年長優勝は、まさに鉄人による偉業だ。9日目には歴代3位となる初土俵からの連続出場1457回を記録。先場所は部屋で新型コロナ感染者が出たため休場を余儀なくされたが、記録継続の措置が取られた。休場当初は記録が途切れたと思い込んだが「自分の代わりに気にしてくれる人が大勢いたのがうれしかった。しっかりやらないといけないと思った」と奮起した。

師匠の片男波親方(元関脇玉春日)は、玉鷲について「相撲の判断。力を逃がすうまさが出てきた」と技術的な部分での成熟を実感しているという。「40歳近くになっているけど衰える概念がない」と舌を巻く。

相撲経験がないままモンゴルから来日し、19歳だった04年初場所で初土俵を踏んだ。18年間無休で走り続け、ついには「鉄人」と呼ばれる域に達した。片男波親方は「モチベーションは連続出場記録と『鉄人』と言われることだと思いますよ」と話す。11月には38歳を迎える玉鷲。鉄人の相撲道はまだ続く。

なお今場所15日間の懸賞本数は1702本で、新型コロナウイルスが本場所実施に影響し始めた一昨年春場所以降では最多となった。