大相撲九州場所(11月13日初日、福岡国際センター)で新十両に昇進するロシア出身の狼雅(23=二子山)が28日、オンライン取材に応じ「何度も決めるチャンスはあったが自分が弱かった。決まってうれしいです」と喜んだ。

関脇の豊昇龍(立浪)、平幕の王鵬(大嶽)と琴勝峰(佐渡ヶ嶽)と同じ1999年生まれ。「(ライバル意識は)特にない。そのうち追いつきます」と力強く言った。まずは十両デビュー場所で勝ち越しを目指す。

「森、川、山、たくさんあり、夏は暑く、冬はめちゃくちゃ寒い」というロシア・トゥヴァ共和国出身。14歳までロシアで過ごしてモンゴルに渡り、15歳で来日して鳥取城北高に相撲留学。外国出身では初の高校横綱に輝くなど実績を残し、二子山部屋に入門。そこから約4年かけて、ついに関取の座をつかんだ。

「少し時間もかかったですね」としみじみと言うのも、無理はない。19年初場所の序ノ口デビューで7戦全勝優勝し、翌場所も全勝で序二段優勝。所要3場所で幕下入り。幕下も5場所目で1ケタ(東8枚目)まで番付を上げるなど順調に出世したが、そこから暗転した。

けがもあって幕下上位につけても勝ち越し、負け越しを繰り返した。昨年初場所は西幕下2枚目と十両昇進に大きく近づいたが、3勝4敗と負け越し。「もっと気持ちが強ければ」と悔しさが募った。「メンタルとか強い方ではない」と自身も認める中で、師匠の二子山親方(元大関雅山)の指導の下で稽古に打ち込んだ。また、メンタル面の強化を図ろうと「いろんな悩みを吹き飛ばす本」などを読み込んだ。

西幕下筆頭として臨んだ秋場所。場所前のけがを抱えながら、「応援してくれる人を裏切りたくなかった。何しても勝とうという気持ちが強かった」と土俵に上がり4勝3敗で勝ち越しを決めた。

18年4月に藤島部屋から分家独立して部屋を創設した二子山親方にとっても、「幕下上位できつい土俵が続いた中で、ようやく上がった」とひときわ感慨深い。「ホッとした思いが一番。高校横綱タイトルを持って入ってきた。すぐ上がるだろうという見方をされていたが、逆にプレッシャーになって彼らしさが出なかった」と思いやった。

同部屋からは初の関取輩出。「稽古場で白まわしがいるだけで緊張感生まれると思う。(若い衆には)いいところを見習って追いついてほしい」と他の力士たちへ奮起を促しつつ、狼雅本人には「すんなり上がるよりは基礎からやってきた分、十両では爆発してほしい」と期待を寄せた。

【平山連】