東前頭6枚目の明生(27=立浪)が、全勝の横綱照ノ富士を破って初金星を挙げ、優勝争いの先頭に並んだ。

終始動き回り、最後は横から攻めて寄り切り。8勝1敗として3場所ぶりに勝ち越した。かつては現役時代の白鵬、稀勢の里、鶴竜の3横綱から目をかけられた“稽古の虫”。「回り道」の末、優勝争いに戻ってきた。前頭朝乃山も勝って1敗は3人となった。

無我夢中で動き回った。明生は立ち合いで低く当たると、照ノ富士が嫌がる動きを続けた。昨秋に両膝を手術し、つかまえて自分の形にしたい横綱をいなし、上手を取らせなかった。横から攻め、右から下手出し投げを打ちながら体勢を崩した。最後は、右をのぞかせ、左を差して寄り切り。初金星で8勝1敗と勝ち越し、優勝争いの先頭に並んだ。「やっぱり大きいし、力も強いので動こうと思った。金星はあまり実感はないけど、久しぶりに勝ち越したことがうれしい」。静かに喜びをかみしめた。

これで照ノ富士には横綱昇進後、3勝2敗とした。過去2勝は三役で勝っており、金星ではなかったが、キラーぶりは健在だった。「やりやすいとかはない。引きずり降ろしたいとかもなかった。目の前の一番に集中。それでやってきた。そこがブレたらダメ」。鹿児島・奄美大島出身。マイペースな口調で話した。

2人は11年5月の技量審査場所が初土俵の同期。明生が強い相手を求めて出稽古する姿勢はずっと変わらず、横綱に昇進した年上の同期のもとも訪れていた。そもそも18年名古屋場所で新入幕後、巡業に全て参加するようになると、誰よりも申し合いをこなした“稽古の虫”。熱心な姿勢を白鵬、稀勢の里、鶴竜も高く評価。ぶつかり稽古や三番稽古で胸を出した3横綱は「明生は強くなる」と、将来性に口をそろえていた。

最近は同部屋の弟弟子、関脇豊昇龍に番付で下回ってばかり。「悔しい気持ちはある。でも人は人、自分は自分。人生は違う。回り道する人もいれば、そのまま行く人もいる。自分は回り道。次の目標は9勝」。1歩ずつ進んだ先に賜杯が見えてくる。【高田文太】

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